「社長 島耕作」の中では魚釣島を奪還するため、オスプレイを出動させました。もちろん、中国側が「固有の領土だ」と主張する島にアメリカの軍用ヘリが上陸をしたらさらなる緊張関係を招きますから、近くに停泊する自衛隊の護衛艦に着陸して、そこからボートで向かうという設定です。尖閣諸島というのは南海の孤島ですから、船で行くとものすごい時間がかかるし、普通のヘリコプターでは兵力を運搬できない。あそこに奪還チームを迅速に送れるのは現時点ではオスプレイしかないのです。事実、自衛隊西部方面連隊も米軍と合同でグアムやテニアンで島とう嶼しょ防衛の投下訓練を行っています。つまり、オスプレイは尖閣諸島に出動することをちゃんと想定しているのです。
このような「実効支配シナリオ」に中国が踏み切らない理由には、やはり日米関係があります。そういう意味では、中国とうまくつきあうには日米安保、日米同盟をより強固にすべきでしょう。日本人は国連というものが中立な機関で、国際紛争を解決できるという思い込みが強いので、日米同盟などいらないという人もいますが、それは大きな誤りです。国連は中国が常任理事国で拒否権を持っていますから、日中関係では機能しません。
今年2月、国連安全保障理事会はシリアのアサド大統領に退陣を求めるアラブ連盟の収拾案を、「全面的に支持する」とした決議案を採択したが、常任理事国のロシアと中国が拒否権を発動し、否決された。国際紛争において、常任理事国というカードを持っている中国と対峙するのは、日米関係だと弘兼氏は考える。
日米関係を重視と言うと、アメリカに追随して、「守ってもらう」というようなことをイメージするかもしれませんが、そんなものは同盟でも何でもありません。日米が対等になるためには、「集団的自衛権」によって、日米の「集団安全保障」を確立すべきなのです。私は今から15年以上前に、内閣総理大臣への道を進む政治家を主人公とした「加治隆介の議」という漫画を書いていますが、その時代から、日本に最も必要なのは「集団的自衛権」だということを主張しています。
もしも、ある軍事大国が周囲を脅かすようになった場合、それに対抗して周辺国がそれぞれで軍事化を進めていくというのは、軍拡競争の引き金となり最悪の展開です。では、そうならないようにするためにどうするのか。
最も平和的な解決策は、周辺国が集まって同盟を結ぶ。つまり、武器を増やすのではなく、仲間を増やして軍事大国の台頭を防ぐ。これが、「集団安全保障」という国際安全保障体制です。しかし、残念ながら日本はこの枠組みに参加できません。自衛隊は「集団的自衛権」を行使しないとしているからです。