どんなにひいき目に見ても日本製テレビは劣っていました。事実、店頭に3列テレビが並んでいても、真ん中の段に置かれていたのは韓国製。パナソニックやソニーは上や下の列に並べられている。そんな惨状を、取材に同行していた某メーカーの社員が本社に報告したところ、返ってきたのはこんな言葉でした。
「そんなはずはない、何かの間違いだろ」
販売店の調整が悪いのではないかと言うのです。今でこそ「日本製が韓国製に負ける」というのも当たり前ですが、当時はそんな現実をとうてい受け入れることはできなかったのです。
私は「島耕作」の中で韓国勢の台頭を一般で言われるよりも早く描きましたが、その時も読者から「韓国製品がいいとありましたが、あの話は本当ですか?」なんて質問がよく来ていました。このような日本メーカーの“上から目線”が敗北につながったということは十分に考えられます。
もちろん、今では多くのメーカーは謙虚さを取り戻しています。よく韓国に対して、「周回遅れ」なんて言われますが、実際は背中も見えない、「2周遅れ」なのですから。例えば、サムスンの2012年の売り上げは約16兆円。うち営業利益は2.4兆円でIT企業としては世界最高です。一方、日本の家電メーカーの売り上げは8社合計で約45兆円。まだまだシェアがあるような気がするでしょうが、実は8社の純利益を全て合わせても、サムスン1社に遠く及ばないのです。
12年、サムスンの営業利益率は14%(予想)だが、国内電機メーカーは2%~5.5%。圧倒的なメタボ体質なのだ。
だからサムスンに勝とうなどと思わず、まずはどれだけ近づけるかを考えたほうがいいでしょう。シャープが出資を受けることに関しても同じです。
今年3月、経営危機に陥っているシャープに、サムスン電子が100億円を出資すると発表。国内製造業や経産省からは批判の声が上がった。出資を受け、今年夏からシャープは「IGZO」などの省エネに優れた中小型の液晶パネルをサムスン電子に供給するという。
日本のパネル技術を奪われたなどと考えるのではなく、サムスンの力を借りて息を吹き返したと思えばいいのです。かつて日本の電機メーカーが元気だった時代、アメリカの映画会社を続々と買収したことがありますが、あれと同じですよ。映画というのはアメリカを代表する産業ですから当然、反発されてジャパンバッシングを引き起こしましたが、あれから20年経過しましたが、アメリカ映画は日本に奪われてなどいません。
ソニーの傘下に入ったコロンビアはヒット作を連発し、息を吹き返した。ユニバーサル映画を傘下に持つMCAを買収した松下電器はその後、撤退。MCA側からすると“丸得”となった。