「楠無益委記(くすのきむだいき)」なる書物がある。作画、作者は恋川春町で、世に発表されたのは1781年(天明元年)。聖徳太子が記したとされる「未来記」を模し、当時の流行や風習とは正反対のことを列挙、いずれこのような時代が来るだろう…とユーモアたっぷりに記した「江戸版未来記」なのだ。
今読み返してみて、案外的を射ているのでは…というのは、女優にして「お江戸系ユーチューバー」を自称、江戸文化歴史検定1級に史上最年少の25歳で合格(当時、合格率5.0%)という変わった経歴の持ち主の、堀口茉純。
彼女のYouTubeチャンネル〈ほーりーとお江戸、いいね!〉の5月6日付け投稿回で取り上げられた一例を紹介すると…。
「新悪原ができて男性の花魁ができるでしょう」というもの。そのページには女装した男性と、お世話役の少年も女装して描かれていたことから、現代で話題となっている「女装男子」「男の娘」を予言していたのでは、と堀口。
また、「猫も杓子も芸者となるでしょう」は、誰もかれもが芸者、つまり芸能人のように注目を浴びる存在になる、とも解釈できる。芸者姿へと人間化して描かれた「猫」と「杓子」が囁きかける町人の表情はなにやら迷惑そうで、ネット社会の「誹謗中傷」と読み取れなくもない。
「恋川春町はユーチューバーとかインスタグラマー、Twitter、TikTokなどの出現などを予言したのかもしれません」と結んだ堀口。
興味深い、恋川春町の予言書…。信じる、信じないは、あなた次第。
(所ひで/ユーチューブライター)