テレビドラマで安定した視聴率が取れるジャンルといえば、刑事ドラマと医療ドラマだ。海外でも人気ジャンルでリメイクされた作品も多い。「相棒」や「ドクターX」といった長寿シリーズを見ても、その人気ぶりはいまだ健在といえる。
1月期のドラマでも「大病院占拠」(日本テレビ系)、「リエゾン─こどものこころ診療所─」「星降る夜に」(いずれもテレビ朝日系)、「Get Ready!」(TBS系)など、医療現場が舞台のドラマは少なくない。
新型コロナ感染症の拡大の影響で、ここ数年は医療ドラマのロケ現場にも変化が生じているという。テレビ局スタッフが話す。
「医療ドラマのロケ地として定番だった病院での撮影が困難になり、撮影場所の変更を余儀なくされることが多くなった。大学のキャンパスもよく利用されますが、それ以外に介護施設も重宝されているんです。エントランスや病室など病院を想定したシーンには最適で、外来患者も少なく、時間の融通がきくので、利用するケースが増えています」
しかし、介護施設でのロケならでは、というトラブルが多発しているというのだ。
関東近郊の介護施設で行われていた撮影で、ある70代の女優が移動のためエレベーターに乗った時のこと。上に行くべきところだったが、間違って地下へのボタンを押してしまった。
女優はエレベーターを降りたところで、すぐに場所を間違えたことに気づき、引き返そうとしたのだが、なんとエレベーターのドアが開かない。ボタンを何度押してもダメで、職員を呼んで開けてもらおうとした。すると、駆けつけた職員は彼女にこう言い放ったという。
「ここからは外にいけないのよ」
「私は撮影で来てるの。間に合わなくなるから、早く開けてください。私は女優なのよ!」
女優は何度も訴えたが、職員は笑みを浮かべたままこう繰り返したそうだ。
「そうね、女優さんね。今日もきれいですね」
先のスタッフが明かす。
「地下は重度の認知症患者が入るフロアで、徘徊しないように、その階からはエレベーターが開かないシステムになっていたんです」
この時は20分ぐらいの押し問答をして、ようやく本当に女優だと理解してもらえたそうだが、同様のケースは少なくない。
「名バイプレイヤーとして有名な60代の俳優も、介護施設の患者たちから友達だと思われて、なかなか解放してもらえなかったと言います」(スポーツ紙記者)
医療ドラマの陰に「介護施設ロケあるある」がありそうだ。