今年1月の高橋幸宏に続き、またしてもYMOのメンバーが亡くなった。坂本龍一さんの壮絶ガン死のニュースは日本中を驚かせたが、死の直前、体力が限界に近づく中で、とある手紙を書いていた。小池百合子都知事や永岡桂子文部科学相に対するものだ。
それは小池氏らが進める東京・明治神宮外苑の再開発に反対する、という中身だった。
再開発の事業者は、明治神宮、三井不動産、伊藤忠商事、日本スポーツ振興センターで、神宮球場や秩父宮ラグビー場の建て替え、移動とともに、高層ビル2棟を建設予定だ。そのためには、神宮外苑の樹木を大量に伐採する必要があり、象徴的なイチョウ並木にも影響を与える。
坂本さんは3月初旬、小池氏に送った手紙の中で「再開発を中断し、見直すべき」と抗議。「目の前の経済的利益のために、貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではない」と意見を述べている。さらには「住民ひとりひとりが住みたい場所のビジョンを持ち、共有されて都市の姿を形づくる。その先に政治家やリーダーを選ぶということがある」として、小池氏や永岡氏の政治観、国家観にも斬り込んだ。
「神宮外苑の再開発をめぐっては、日本イコモス国内委員会(国際記念物遺跡会議)も、開発計画の全面見直しを都に要請しました。3000本の樹木が伐採されることになると、指摘したのです」(都庁関係者)
坂本さんの抗議に対し、小池氏は3月17日の会見で、手紙を受け取ったことを認めた上で、事業者である明治神宮にも手紙を送ってはどうかと提案した。
だがこの時すでに坂本さんは「音楽制作も難しいほど、気力・体力ともに減退している」状態。
「最後の力を振り絞っての抗議に、小池氏の対応はなんとも淡泊だったといえますね」(前出・都庁関係者)
訃報を聞いて、小池氏や永岡氏はなんと感じているのだろうか。