昭和20年代までは「亡国病」と呼ばれていた「結核」。治療法が確立され、死亡者数も激減しているため、「昔の病気」というイメージを持っている人も多いのではないだろうか。
しかし、近年「結核」による死亡者数が増加している。日本でも1年間に約1万8000人が発症している。しかも発症した人の約6割が70歳以上の高齢者で占められ、毎年約1900人が亡くなっているという。
世界的にもいまだ総人口の約4分の1が感染している状況だ。2021年に発表されたWHO(世界保健機関)のレポートによると、結核の死者数が増加したのは16年ぶりのこと。
そもそも「結核」とはどういう病気なのか。これは、結核菌によって主に肺に炎症が起きる感染症。初期には、風邪に似た症状を発症するのが特徴だ。最近では、新型コロナウイルス感染症の症状とも似ていると指摘されている。
もし、タンが絡む咳や微熱、倦怠感などの症状が2週間以上続く場合には、「結核」の可能性があるため、早めに医療機関を受診することが必要だ。
特に高齢者は、咳やタンなどの症状を自覚しにくくなるため、発見が遅れるケースも多い。さらに最近では、新型コロナウイルスの影響で、結核患者の発見が難しくなっているとの指摘もある。症状が似ている以外にも、コロナ禍で健康診断や受診を控える人が増加したことや、多くの資源や人材がコロナ対策に割かれたことで結核対策が手薄になっていることなど、複数の要因が絡んでいると推測されている。
日本でも注意が必要な「結核」だが、6カ月から9カ月の服薬により治療が可能だ。治療費用に関しても、届け出をすることで公的負担の制度が受けられる。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。