偉人の名言や、世界遺産を知らないというボケのエースに、ツッコミの寺家が分かりやすく解説していく。そんな漫才スタイルで昨年末の「M-1グランプリ2024」を席巻し、審査員のオードリー・若林正恭から「久しぶりにワクワクするバカが現れた」と最大級の賛辞を受けた。最終的に優勝トロフィーは令和ロマンに持っていかれたものの、彼ら以上に「売れる」予感をもたらしてくれた。
そんな漫才コンビのバッテリィズが、どうもおかしいのだ。
12年前の2013年、18歳でまだ一般人だったエースは「さんま・玉緒のお年玉!あんたの夢をかなえたろか」(TBS系)で街頭インタビューを受けた際に「さんまさんと一緒にテレビ出たいっす。芸人目指してるんで。NSCに来年から行こうかなと思ってるんです」と夢を語っていた。そして今回、満を持して「踊る!さんま御殿!!」(1月14日放送・日本テレビ系)に登場したのだった。
正確には明石家さんまとは初絡みではないものの、「M-1準優勝」という看板を引っ提げての、堂々の登場だった。ところが…。
「御殿」でハネるとブレイクする、という業界の定説がある中、「好きな四文字熟語は?」と聞かれたエースが「天津炒飯」と答えて「踊る!ヒット賞」を獲得したくだり以外は、やや消化不良。そこで出た視聴者の感想が「もう賞味期限切れ濃厚」「かなりイメージダウン」「エースが本領発揮していない」などだった。
この失速感はいったい何なのだろうか。バラエティー番組に携わるベテランの放送作家が解説する。
「『M-1』は芸人の見本市と言われるほど、業界人が注目するイベントであり、次のスター探しの場となっています。その中でエースは、審査員の若林が絶賛したように、根っからのアホキャラだと思われていました。近しいキャラとしては、錦鯉・長谷川まさのりの系統ですね。ただし、今ではもう、漫才で見せた『愛おしいアホ』とは違った印象を持たれています。寺家がエースを放任しすぎで、存在感が薄い。『御殿』では離れた席にいたNON STYLEがフォローに回っていましたが、平場のコンビバランスが、漫才の時より悪い。もしこのまま人気が継続したとしても、エースだけ呼ばれるケースが出てくるのでは」
早くも正念場が訪れているとは、なんとも厳しい世界である。
(井上道夫)