この春、活躍が目立った騎手といえば、真っ先に丹内祐次の名前が挙がるだろう。現在33勝で、リーディング5位。現在のペースなら、年間100勝は十分に可能だ。これまでの年間最多勝利は2022年の64勝だったが、それを超えるのは間違いないだろう。
丹内といえばローカル騎手というイメージが強く、実際に今年の33勝中26勝は、裏開催で挙げている。今年は1回小倉競馬で17勝(うち重賞2勝)で、開催リーディングジョッキーとなったほどだ。
重賞勝ちはこれまで交流重賞を含めて11回あるが、中央場所で勝利したのは3回だけ。もちろん、GⅠ勝利はない。同期の川田将雅、藤岡佑介、吉田隼人、津村明秀がGⅠ騎手となっているだけに、早くその仲間入りをしたいところだろう。
彼の良さはなんといっても、積極性に富んだ騎乗にある。ペースが遅いとみるや即座に馬を動かしていき、脚を余すようなレースにはまずしない。小回りの福島や小倉でよく勝つことができるのは、そのためだ。
勝ち星が増えるにつれ、騎乗依頼はグッと増えてきた。以前はラフィアンやコスモの主戦騎手というイメージが強かったが、最近は騎乗馬の幅が広がり、社台の馬に乗ることもある。関東馬だけでなく、関西馬の騎乗依頼も多い。ちなみにエージェントは「馬三郎」の常木翔太氏で、横山武史、内田博幸、小林美駒と一緒だ。
この日曜の皐月賞(GⅠ、中山・芝2000メートル)では、1月19日の京成杯で2着に入ったドラゴンブーストに騎乗する。7番人気で3連単172万7970円の片棒を担いだ馬だ。それゆえフロック視されているが、走破時計2.00.0は、この舞台で3番目と優秀である。3走前のデイリー杯2歳Sで2着に入っているように、力があるのは確かなのだ。マクリ勝負に出るファウストラーゼンに上手く乗っていけるようなら、面白い存在になる。「乗れている」丹内が騎乗するだけに、軽視するのは危険だ。
たとえこのレースで結果を出せなくても、GⅠ制覇のチャンスはすぐにやってくる。日経賞で重賞初制覇を果たしたマイネルエンペラーで、5月4日の天皇賞(GⅠ、京都・芝3200メートル)に挑むのだ。全姉にオークス馬ユーバーレーベンがいる良血馬。馬体がひと回り大きくなり、逞しくなった。京都で2勝しているように、コース実績は十分だ。スタミナ豊富の上がり馬だけに、今からその走りが楽しみになる。
(兜志郎/競馬ライター)