いったい女性に対してどのような見識をもっていれば、こんなとんでもない言葉が口をついて出るというのか。しかも発言した場所は、酔っ払いがくだを巻く居酒屋ではない。鹿児島市内で開かれた、少子化などに関する討論会という公の場所だ。驚くべきことを言い放ったのは、自民党の太田誠一氏。2003年6月26日のことである。
元総務庁長官の太田氏は当時、行政改革推進本部長のほか、衆院青少年特別委員という役職にあった。ところが席上、早稲田大学生による女子大生集団レイプ事件に触れて、
「集団レイプする人はまだ元気があるからいい。正常に近いんじゃないか。そんなことを言ったら怒られるけど」
誰もが「えっ!?」と耳を疑った、人権完全無視の犯罪肯定発言。この事件は早稲田大学のイベントサークル「スーパーフリー」を舞台にした、女子大生への大規模組織的レイプ。2003年5月に女性が警察に被害届を出したことで、事件が発覚。メンバーは1998年頃から常習的に犯行を繰り返し、レイプされた女性の数は数百人に及んでいたことが明らかになった。そんな鬼畜に対し「元気があるからいい」と評するとは、もはやアキレて物が言えない、とはこのこと。政治家というより人間としてどうなのか、という批判が起こるのは当然のことだった。
この翌日、衆参両院の野党女性議員9人が太田氏に対し「被害者の女性たちはもとより、女性全てを侮辱し蔑視したものと言わざるをえず、とうてい許されるものではない」とする抗議声明を提出。太田氏の猛省と公式謝罪を求めた。太田氏は即刻、釈明に追われることになる。
「不適切で誇張した表現で、深く反省している。被害者をはじめ、多くの女性の方々に不愉快な思いをさせ、お詫びする」
しかし、この程度の謝罪で事態が収まるはずもなく、選挙区の地元福岡県内からも「女性蔑視も甚だしい」「政治家として、人間としてあるまじき発言」「国会議員が聞いて呆れる。即刻、政治家を辞めてほしい」と怒りの声が噴出することに。
太田氏はこの年の衆院選で落選。だが、のど元過ぎればなんとやら。3年後の2005年の衆院選では当選し、政界へ復帰した。さらに、2008年8月に福田改造内閣では農林水産大臣に就任している。
しかし、同年9月、事故米不正転売事件により辞任。翌2009年8月の衆院選で落選し、2年後の2011年2月に政界引退を表明した。
「不適切発言」などという表現では収まらない前代未聞の大暴言が国民を驚愕させた大騒動だった。
(山川敦司)