首相が首相だから、選んだ大臣も暴言王だった。そんな声が野党から一斉に上がったのが、2008年9月25日。発足したばかりの麻生内閣で国土交通大臣に就任した中山成彬氏が、報道各社とのインタビューで言い放ったトンデモ失言の大連発が原因だった。
中山氏は大蔵官僚から政界入りし、文部科学大臣などを歴任。かねてから保守派の論客として知られ、歴史教科書について、
「やっと最近、いわゆる従軍慰安婦とか強制連行とかいった言葉が減ってきたのは、本当によかった」
批判を受けて陳謝したこともあり、最大派閥の町村派に麻生首相が忖度した国交大臣への抜擢に、党内からは「失言」を心配する声が出ていた。とはいえ、まさか入閣発表翌日に連発させるとは…。
この日のインタビューは大臣就任に際し、記者会に所属する各社がグループに分かれ、30分ずつ交代で質問するというものだった。成田空港問題に触れた中山氏はのっけからこう言い放ち、記者たちを驚かせたのだ。
「(滑走路の)一車線がずうっと続いて、日本とは情けないなあと。『ごね得』というか、戦後教育が悪かったと思うが、公のためにはある程度、自分を犠牲にしてでもというのがなくて、自分さえよければという風潮の中で、なかなか空港拡張もできなかったのは大変残念だった」
発言はまだまだエスカレートする。
「外国人を好まないというか、望まないというか、日本はずいぶん内向きな単一民族というか、世界とのアレがないものだから、内向きになりがち。まず国を開くというか、日本人が心を開かなければならない」
単一民族問題に対する持論を展開しただけでも大失言だが、さらにこう続けたのである。
「ついでに言えば、大分県の教育委員会のていたらくなんて、日教組ですよ。日教組の子供なんて、成績が悪くても先生になる。だから大分県の学力は低いんだよ。私は(文科相時代に)なぜ全国学力テストを提唱したかといえば、日教組の強いところは学力が低いのではないかと思ったから。現にそうだよ。調べてごらん。だから学力テストを実施する役目は終わったと思っている」
何が「ついで」なのかはわからないが、平然とした表情でこう言ってのける中山氏に、記者たちは口をあんぐりさせるしかなかったのである。
日本教職員組合は即日、「全国の教職員および子供たちの日々の教育活動を冒涜し、人権を蹂躙する発言であり、断じて許されるものではない」として、中山氏に謝罪と辞任を強く求めた。成田空港のある千葉県、そして単一民族発言に関しては、北海道アイヌ民族ワタリ協会も猛烈に抗議した。
「中山さんは日教組以外には謝罪したものの、それでも当初、大臣を辞めるつもりはない、との意向を表明していたんです。ただ、麻生内閣が受けたダメージは想像以上に大きく、2日後の夜、麻生首相に辞表を提出することになりました」(政治部記者)
失言なのか、あるいは確信犯的発言だったのか。
(山川敦司)