デンマーク当局により、反捕鯨団体「シー・シェパード」創設者のポール・ワトソン容疑者が逮捕、拘束されたのは2024年7月だった。ワトソン容疑者は、2010年に日本の調査捕鯨船への妨害を指示したなどとして国際手配され、デンマーク領グリーンランドで身柄拘束後、日本政府が身柄の引き渡しを求めていたが、デンマークがこの要請に応じず、12月17日にワトソン容疑者を釈放。フランスに戻ったワトソン容疑者は、支援者を前にした集会で、
「日本は私のことを『武装したテロリスト』と言っているが、本当のテロリストは地球を破壊しているヤツらだ」
などと、改めて日本の捕鯨を非難した。
シー・シェパードをめぐっては、以前から同団体の抗議船と日本の調査捕鯨船が衝突する事故が起きている。南極でも日本の調査捕鯨船に対し、同メンバーらによる嫌がらせが繰り返し行わるなど、環境保護の名のもと、そのやりたい放題の行為に、日本は手を焼くばかりだ。
ところが欧米各国の捕鯨批判に反対する立場をとる日本の首相が、オランダ首相との会談の席で「私はクジラ肉は嫌い」と大暴言をブチかまし、業界団体から大ヒンシュクを買ったことがある。暴言の主は、鳩山由紀夫氏だった。
コトの起こりは2009年10月26日、鳩山氏が首相官邸でオランダのバルケネンデ首相と会談中のことだった。オランダは反捕鯨国であり、シー・シェパードに抗議船の船籍登録を許可している。シー・シェパードはオランダ船籍を使い、日本の調査捕鯨船の活動を妨害してきた。むろんそのいきさつは、鳩山氏とて承知しているはず。
にもかかわらず、何を思ったのか、
「貴国としてしっかり対処してほしい。私はクジラ肉が大嫌いだ」
まるで反捕鯨の動きを後押しするような言葉を発したのである。
さすがにこれには党内からも批判の声が続出し、大慌ての側近らは「首相は相手の考え方に共感を示そうとした」と、ワケのわからない説明に終始した。
実は鳩山氏は民主党幹事長時代にも、反捕鯨国であるオーストラリアのスミス外相と会談した際に、こんなことを言っている。
「実は今朝、家内(幸夫人)の手料理にクジラが出た。私はクジラを食べない主義なので、拒否した」
まさか交易を左右する首脳会談で一度ならず、二度までもこんな発言が飛び出すとは…。この無神経さによって、調査捕鯨に携わる関係者のみならず、クジラ肉で生計を立てる人たち全てを敵に回してしまったのである。
鳩山氏の「その場しのぎ」な軽率発言は枚挙にいとまがないが、改めて一国の首相としての不見識ぶりを、世界に知らしめることになった。
(山川敦司)