その警告試合が宣告されたのは、コロナ禍の2020年10月3日、ヤクルト×広島16回戦(神宮)でのことだった。広島が13点リードで迎えた8回。一死一塁の場面で、広島2番手の菊池保則の投球が、青木宣親の左ふくらはぎを直撃。激痛で倒れ込み、悶絶する青木はトレーナーに肩を抱かれ、ベンチ裏へと下がった。すると次打者・山田哲人の打席で、広島が陣取る三塁側ベンチから「(死球を)もう一発!」とのヤジが飛んだのだ。
これに対し、近くにいたヤクルト・森岡良介三塁コーチが「何がもう一発や!」と激怒。両軍ナインがグラウンドに飛び出し、本塁付近でまさに一触即発状態となってしまったのである。
とりあえず、ヤクルト・高津臣吾監督と広島の佐々岡真司監督が話し合って選手たちをなだめ、乱闘は寸前で回避されたのだが、直後に審判がこれを警告試合としたのだ。
「日本野球機構(NPB)のルールでは、警告試合になるとその後、審判員が危険な投球やスライディングなど報復行為と判断した場合、理由の有無を問わず、その選手や当該チーム監督に退場を宣告することができます。コロナ禍で、本来は『密』を避けなければならない状況の中、このヤジにより異例の騒動勃発となってしまったわけです」(スポーツ紙記者)
野球にヤジはつきものだ。勝敗を分ける激しい攻防戦の中、興奮したファンから不適切なヤジが飛び、それに選手が応酬してしまう光景を見かけることがある。
試合当日は土曜日ナイターで、コロナ禍とあって観客は入場制限により1万5000人。さらに鳴り物応援の自粛や「大声を出す応援は禁止」などのルールがあったことが、広島ベンチからのヤジをより一層、球場全体に響かせてしまったのかもしれない。
(山川敦司)