世間に衝撃を走らせた、清原和博被告(48)の逮捕から、はや2カ月が過ぎた。本人も保釈され、騒動も落ち着きを取り戻したかのように見える。ところが、あの日以来、「薬物市場」が激変し、今も混乱が続いているというのだ。
薬物犯罪事情に詳しい、ヤクザ組織の幹部が明かす。
「警視庁が清原だけで終わらせないよう、あおってるよな。各県にも警視庁から動員がかけられている。特に清原が買いに行ってた群馬は目をつけられてんのか、清原に売って捕まった小林って売人に卸してたやつが、今は自宅に帰れず、車上生活してるってな。不用意にシャブなんか扱えなくなった。問屋には定期的にブツが入ってるけど、在庫があっても市場には卸せないってわけだ。清原騒動前の1~2割しか市場には出てないよ。でも、のりピーやASKAの騒動後だって、ここまでの“出し控え”はなかった。結局、ヤクザの世界でもゴタゴタが続いて取締りが厳しいだろ? 売るほうは二重に慎重さが求められちまってんだよ」
世の中に覚醒剤が派手に出回らなくなったのであれば、一般的には歓迎すべき流れと言える。その一方で、シャブの需要と供給でバランスが保たれている闇社会には大打撃だったようだ。
東京近郊のシャブ売人が嘆きつつ、現状について語る。
「小売りには入ってこないんだから商売になんないよ。でも、少ないもんを売るんだから、そん時は高いよ。末端価格で1グラム3万円だった相場が、今は4万円。清原が参加してたと聞く都内のパーティでは運ぶ車代も込みで1グラム5万円だったって聞いてるけど、一般のポン中でも今はそれぐらい金を出すよ」
先の売人によれば、シャブを求める連絡を受けても「今、ものがないから」と断っているような品薄状況で、入荷しようものなら、仮に条件が悪くても覚醒剤常習者は飛びついてくるというのだ。
「市場にシャブが出回ってる時は、客も小売りを選んで、値段が同じなら上物を買おうとするよ。最近はベトナム産なんか、ものがいいんだけど、なかなか入らなくて、安くて粗悪な混ぜ物をしている中国産でも高く売れる。中国産を1グラム3万5000円ってうたって、中身は0.6~0.7グラムしか入れないで売っても、『ものがねえんだからしょうがねえだろ』で、トラブルにもなんないな」(前出・シャブ売人)
高くても買いたいが、買おうにも売っていない。
自業自得とはいえ、衝動を抑えられない覚醒剤常習者は思わぬ行動にまで出ているという。
「禁断症状が出てるやつがいるな。警察に生活を監視されてるんじゃないかと妄想を抱くほどシャブ漬けだったやつなんか、買えないもんだから注射器に水だけ入れて腕に針刺してるよ。ろくでもないポン中だから、当然無職。働けるわけねえよな。もともと金がねえのに、高騰したシャブの代金をどうするかって? 手っとり早くトラックとかかっぱらって売っちまうんだ」(前出・ヤクザ組織幹部)
さながら、覚醒剤に溺れた人間の末路を聞かされているようだ。ところで、一般的に薬物事犯の再犯率は高いと言われるが、
「清原のケースじゃ、携帯の解析から売人が1人だけ捕まったけど、最後まで自分の口からはルートを漏らさなかったよな。俺らから言わせると、それはすなわち“またやります”ってことだよ。反省してたらしゃべるだろうよ」(前出・シャブ売人)
清原被告が同じ過ちを繰り返すなどとは考えたくもない。ただ皮肉なことに、社会から覚醒剤流通ルートが減ったのであれば願ったりではないか。
ところが、前出のヤクザ組織幹部は不敵に笑う。
「出し控えておとなしくしてるのは、だいたい騒ぎの元がシャバに出て3カ月ぐらいだな。清原は3月の後半に出たから、6月下旬にはシャブ市場も戻ってくるんじゃないか。数が出回れば相場も下がる。でも、オマワリだってそんな流れは全部知ってんだ。また有名人が挙げられるかもな(笑)」
「清原逮捕」の余波が消えた時、闇市場は再び騒がしくなってしまうのか──。