高橋氏は昨年暮れ、「毎月少しずつでもいいから返済してほしい。できないなら、貸した金を肩代わりしてくれる人を探そう」と濱風親方に提案。そして今年1月、2人はこんな会話を交わしている。
高橋氏 肩代わりする人が見つかった。手続きしたい。
濱風親方 進めましょう。公正証書を作ってやればいい。弁護士に頼めばいい。
ところが、これ以降、濱風親方とは一切連絡がつかなくなる。電話には出ず、メールの返信もないのだ。
「穏便に解決しようと思い、肩代わり先まで見つけてきたのに、なしのつぶて。何の説明もない。ただ逃げているとしか思えません。恩を仇で返す以上の仕打ちではないか。こんなことは許されることではない。4360万円をタダ取りする気だ。この借用書はいったい何なんだ。もう取り立て訴訟を起こすしかなかった」(高橋氏)
高橋氏が濱風親方の本名「小島章朋」を被告として貸金返還訴訟を起こしたのは、今年3月16日だった。
悲憤慷慨する高橋氏について、相撲ジャーナリスト・中澤潔氏(80)はこう話す。
「昔から相撲取りは取ることはするが、出すことはしない。そういう対象の人に貸したら帰ってこない。今も昔も、半ば角界の常識となっているんです‥‥」
さらに、この裁判で、濱風親方側は本人も弁護人も出廷すらしていない。
濱風親方の言い分を聞こうと本誌は複数回、自宅を訪ねたが、インターホンを押しても反応がない。佐渡ケ嶽部屋にも顔を出していないため、場所中の両国国技館で直撃を試みた。濱風親方らしい姿は見えたものの、スタッフに取り次いでもらうと多忙、不在などの理由で会えず、携帯電話にかけても留守電のまま。取材趣旨のメッセージを入れても連絡はなかった。
その濱風親方に代わって、代理人の弁護士に取材を申し入れると、
「係争中なのでコメントできません」
さらに公判欠席の理由を尋ねても「ノーコメント」だった。
この代理人弁護士は高橋氏に対し、こんな文面の書類を送っている。
〈高橋氏は4000万円近くの金員を貸与している旨主張していますが小島氏に、高橋氏に対する債務は一切ありません〉
高橋氏は言う。
「私の自己破産が、返済を請求する権利がないと主張しているのでは‥‥」
だが、高橋氏の代理人弁護士は、
「濱風側は何か勘違いしているのではないか」
旧態依然とした「ごっちゃん体質」。礼儀を重んじる国技に携わる人物として、力士を指導する親方として、はたして許されることなのか──。