社会

実録・東京電力「福島原発コールセンター」の闇(1)勤務先を知らない勤務者も

 東日本大震災から6年3カ月が経過した。いまだ、収束には程遠い福島原発の賠償を巡っても避難住民たちとの間で、軋轢があとを絶たない。そんな住民たちのクレームの窓口となっているのが、東京電力の「福島原発コールセンター」だ。日夜、さまざまな電話に応対する職場に記者が潜入。過酷なオペレーターの闇に迫る。

「勤務先は、東京電力のコールセンターです。福島の原発事故で避難を余儀なくされた人たちから賠償の相談を受けるのが仕事です」

 派遣会社から電話がかかってきたのは、勤務開始の3日前だった。私は心の中で快哉を叫んだ。こちらから頼んででも従事したい仕事だった。

「東京電力というと、抵抗を覚える方もいらっしゃるんですが、大丈夫ですか?」

「とても大切なお仕事だと思います。やりたいです」

 微力なライターである私が、出版不況の大波に呑み込まれないわけがない。仕事の発注が減ってきたので、アルバイトしようと、派遣会社に登録したのが、昨年3月のことだ。

 メールで流れてくるバイト情報には、時給や勤務条件はあるが、勤務先は記されていない。

 ここに派遣会社の存在意義がある。企業の顔としての電話応対を、バイトにやらせていることを、世間に知られずに済むわけである。

 私が約半年間勤務したのは、東京都の外郭団体のコールセンターだった。

 勤務初日は、JR山手線の某駅の改札口近くで、派遣会社の社員と待ち合わせた。約15分ほど歩き、とあるビルに入っていく。外部には表示されていないが、東京電力の建物だ。

 私が登録した派遣会社は規模が小さく、連れてきた勤務者は2人だけ。他の派遣会社は、それぞれ5~8名くらい連れてきている。総勢30名ほどだ。ここに来てから初めて、勤務先が東京電力だと知って、戸惑っている者もいる。

 正確に記せば、東京電力から委託を受けたコールセンター運営の会社が、私の勤務先である。それがビルの2つのフロアを占めていた。

 コールセンター内の会議室で、講義を受ける。賠償の内容は多岐にわたるので、10日間という短い研修期間では、その枠組みをつかんだという程度だ。

 最終日、コールセンターの男性幹部が姿を現した。

「なぜ、東京電力が賠償しなくてはいけないのか、わかりますか?はい、キミ」

 最前列に座る男性に、男性幹部が聞いた。

「放射能をまき散らしたから?」

「放射能はまったく関係ありません。政府の指示によって、避難を余儀なくされたので、それに対して賠償するんです」

 平然とそう言い放った男性幹部は、放射能は関係ないということを、何度も繰り返した。

深笛義也(ジャーナリスト)

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