7月からTBS系「日曜劇場」の枠で「この世界の片隅に」が初めて連続テレビドラマ化される。こうの史代の漫画を原作に、戦時下の広島県・呉で生きる若妻・すずの日常を描き出したもので、3000人のオーディションの中から選ばれた松本穂香がヒロインを演じ、その夫役の松坂桃李の他、宮本信子、伊藤蘭、仙道敦子、二階堂ふみ、村上虹郎など豪華なキャストが顔をそろえる。11年には北川景子主演でスペシャルドラマ化もされており、16年の片渕須直監督のアニメ映画は200万人を超える観客動員数を記録し、数多くの国内外映画賞にも輝いた。
戦争を題材にした作品で、漫画やアニメが引き金となってメディアミックス化されたものは他にもある。その代表格が、中沢啓治が自らの広島での被爆体験を基に漫画化した「はだしのゲン」だ。
原爆投下後の広島でたくましく生きる少年・ゲンの姿を描いたこの作品は、73~74年に「週刊少年ジャンプ」で第1部が掲載され、76~80年にかけて山田典吾監督の手で3部作の実写映画になった。その後、原作者自身がプロデュースし、83年と86年に2部作のアニメ映画が完成。07年にはフジテレビ系でスペシャルドラマも作られている。また、故・野坂昭如が自らの神戸大空襲と妹との死別体験をもとに発表した「火垂るの墓」は、先ごろ亡くなった高畑勲監督により88年にアニメ映画化され、原作小説を読んだことのない世代にも広く知れ渡った。こちらも05年に日本テレビ系がスペシャルドラマ化し、08年には日向寺太郎監督によって実写映画化されている。
「今年は第二次世界大戦終結から73年を迎えますが、『はだしのゲン』の描写が残酷だと指摘されるような世相を見ると、戦争の記憶は完全に風化しつつあります。実写・アニメ・漫画の連動作品が数十年の時を超えてリメイクされ続ける意義を、今こそ考えるべきではないでしょうか」(映画評論家)
次世代に戦争の“現実”を伝えていく意味でも、こうした作品の存在は貴重といえるだろう。