テリー そういうことが続くと、会長に対する不信感は生まれなかったですか? 血だらけで頑張った結果、いくらの稼ぎになったのか、普通は気になるじゃない。芸能界でも、ピンク・レディーなんかは人気絶頂の時、お金はそんなにもらってなかったっていう話もあるけど。
長与 自分の場合は、それでも全てが許せた出来事があったんです。ある時、会長に葉山の油壺に連れて行かれたら、大きなクルーザーが2艇停泊していて、会長が「買ったんだ」ってニコニコしながら言うんですよ。しかも2つとも買ったと言うので、「誰が乗るんですか。そもそも、免許持っているんですか」と聞いたら「そんなもん持ってねえよ、でも乗るんだよ!」と返されて。その時「ああ、ちゃんと親孝行できているんだな」と思ったんですよ。
テリー え、今の会話に、どこか許せるところってありました?(笑)。
長与 ハハハ、自分が入ったばっかりの頃は、ビューティ・ペアさんたちが起こした女子プロレスブームがすでに一段落していて、会場のお客さんも50人ぐらいしかいなかったんです。そこからみんなで一生懸命頑張って、やっとどこの会場でもソールドアウトするようになったんです。
テリー ああ、なるほど。自分たちを支えてくれた会長が、好きなクルーザーを買って喜んでいる姿を見て「親孝行ができた」と思えたってことですか。
長与 そうです。だから、武道館の物販の時も、「自分の務めはしっかりできているんだな」と思っていました。
テリー それにしてもいきなりクルーザーを2艇買うなんて、会長もずいぶんとユニークな人ですねェ。
長与 確かに会長は少し変わっていて、試合そのものの収益なんかより、自分が焼いた焼きそばの売り上げのほうを気にするんですよ(笑)。
テリー なるほど、そういった愛すべき面もあるのはわかりますけど、プロレスラーって危険だし、いつまでもできる仕事じゃないでしょう。だったら、乗れない船なんか買わないで、選手たちに「これでマンションでも買いなさい」みたいなことをしてほしいですよね。
長与 あ、そういうこともありました。今考えると、たぶん税金対策だったと思うんですけど(笑)、ダンプ松本さん、ライオネス飛鳥と自分が順番に呼ばれてボーナスを渡されたことがあるんですよ。金額はそれぞれ違うと思うんですけれど、自分には1000万円が用意されていました。
テリー うぉー、すごい!それ、目の前にドーンと置かれたの?
長与 はい、「これで親に家でも建ててやれよ」なんて言われて。でも自分は、「いやいや、ちょっと待って!」と言って、受け取らなかったんです。
テリー ええーっ、もったいない。また、なんで?
長与 またいつか、以前のように女子プロレスが低迷する時が来ると思っていましたから、「このお金は、その時のために取っておいたほうがいいんじゃないですか」と。
テリー バカだねー、とりあえずお金をもらっといてから言えばよかったのに。
長与 ですよね、他の2人はちゃんともらっていましたから。
テリー そりゃそうだよ。
長与 いやァ、その時はそれでいいと思ったんですけど、大人になると、あらためて「何やっちゃったんだ、自分は‥‥」みたいに後悔しています(苦笑)。