食後に、下っ腹がぽっこりと出てしまう人は、もしかしたら胃下垂かもしれない。
胃下垂とは、胃が正常な位置より常に下がっている状態を指す。通常、胃はみぞおちあたりにあるが、胃下垂となると、下腹部やおへそのあたりまで垂れ下がってしまうのだ。
食べたものが胃の中に長く滞留し、消化に負担がかかるために、胃もたれやむかつき、膨満感、吐き気や胃痛などを感じることもあるが、自覚症状は少ない。それどころか、健康診断のバリウムを飲んでのレントゲン検査で、胃が垂れ下がっている状態が確認されて、初めて知る人も多い。
なぜ胃下垂になるのか。体質的なものや遺伝的な要因が大きいが、胃を支える筋肉や脂肪が不足している痩せ型の人に多く、暴飲暴食や過労、不安、ストレスなどが引き金となり、胃の動きが悪くなると症状が出やすいという。中には急な体重減少や腹部手術などのあとに胃下垂になってしまう人もいる。
病気ではないので、治療の必要はないケースが多いが、胃の調子が悪いと感じている時には、整腸剤や消化酵素剤などを使用して症状を和らげる場合もある。
改善方法としては日常生活を見直すことが一番だ。胃の消化機能が低下しているので、一度に多くの食事を摂らない。また、胃を持ち上げたりする筋肉も弱っているので、腹筋や背筋などの筋力トレーニングも有効だ。
特に猫背の人は、胃を下へ下へと押し下げてしまうので姿勢を正しくすることを心がけてほしい。背筋をピンと伸ばすだけでも、胃下垂を楽にしてくれる効果がある。
胃下垂自体は大きな問題はないが、まれに胃ガン、胃食道逆流症、パーキンソン病などが原因となる場合もあるので、他に不快な症状がある場合は、医療機関で早めに検査を受けておいたほうがいいだろう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。