フジテレビの恋愛リアリティ番組「テラスハウス 2019-2020」に出演していたプロレスラー・木村花さんが亡くなったことは、今後の番組収録の在り方にも一石を投じることになるかもしれない。
5月23日、度重なるSNSでの誹謗中傷に耐えかね、自ら命を絶ったとされる木村さんだが、「テラスハウス」では“演出的編集“によって彼女がヒール役を背負わされたのではないかと物議を醸している。また、俳優の中尾彬もテレビ朝日系「グッド!モーニング」の中で、「テラスハウス」を制作するフジテレビが「面白い場面ばかり編集していた」とし、「都合の良いところだけを切り取って、なぜ(木村さんを)フォローしなかったのか」とも指摘。木村さんをネット上の誹謗中傷から守るべきだったのは局側だと主張していた。
だが、テレビ局が演者による番組内での“爆弾発言“や“大胆発言“をクローズアップすることで視聴を煽ってきた歴史があることは否めないだろう。
たとえば、同じフジテレビでは2015年6月、当時はまだ女優として駆け出しという立場だった広瀬すずをバラエティ番組「とんねるずのみなさんのおかげでした」にゲストとして招き、石橋貴明と木梨憲武との軽快なトークを放送。その中で、「私、冷めててドライな性格なんです」と説明する広瀬に対し、石橋が「テレビ局で働く照明さんなんか見るとどう思うの?」と振ると、広瀬は「どうして生まれてから大人になった時に照明さんになろうと思ったんだろう?」とその心情への想いを巡らせた。
続けて、音声スタッフについても「なんで自分の人生を女優さんの声を録ることに懸けてるんだろう?って考えちゃう」「大人になって年齢を重ねると共に、本当に声を録るだけで良いの?」などと発言。これが放送後にスタッフ軽視の職業差別だと指摘され、広瀬は自身のSNSアカウントで謝罪する事態にまで発展した。
「番組側は一連の広瀬の発言を単なる“若気の至り“と判断したのか、もしくはとんねるずと広瀬の貴重な長尺の絡みにカットを入れるタイミングを見出せなかったのか、その理由は分かりません。しかし、大人が配慮のある編集を施していれば、デビューしたての女優がわざわざ17歳の誕生日にツイッターで謝罪投稿をする羽目にはならなかったのでは」(テレビ誌ライター)
さらに遡れば、歌手の倖田來未もまた2008年に出演したラジオ番組で、ニッポン放送による“カットをしない“編集の犠牲となっている。倖田は一夜限りのパーソナリティとして同局の「オールナイトニッポン」に出演したが、「女性は35歳を超えると、お母さんの羊水が腐ってくるんです。本当に! 汚れてくるんです」と笑いながら話し、根拠のない発言だったとして放送後に非難が集中した。
「同ラジオ番組は生放送ではなく収録であったにもかかわらず、ニッポン放送は誰が聞いても問題発言だと認識できる倖田の発言に適切な編集を施すことなく、そのまま放送しました。意図的な編集を加えることで番組でのヒール役を作り出すケースもありますが、広瀬や倖田の場合は、然るべきカットがされないことでの犠牲となり、いずれにしても編集に落ち度があったと言えるでしょう。もちろん彼女らが倫理的に問題があると認識されてしまうようなコメントを発したことは事実。しかし、収録当時まだ16歳だった広瀬や、26歳の倖田は番組を盛り上げようと普段以上にハイになってトークに臨んでいた可能性もあるため、そこは冷静な周囲の大人が配慮を見せてあげる必要があったとも考えられますね」(前出・テレビ誌ライター)
これ以上、演者やタレントが不必要にヒール役に仕立て上げられ、放送後に誹謗中傷の標的となってしまうような番組作りについては、やはり見直していく必要があるだろう。(木村慎吾)