●ゲスト:古舘伊知郎(ふるたち・いちろう) 1954年、東京都生まれ。77年、テレビ朝日にアナウンサーとして入社。新日本プロレスの実況で人気となる。フリーとなった以降もF1などの実況を担当し、「実況=古舘」のイメージを確立する。また、94年から3年連続で「NHK紅白歌合戦」の司会を務めた。2004年よりテレビ朝日「報道ステーション」のキャスターを担当、現在は再び自由なしゃべり手に。8月14日(金)、6年ぶりとなるトークライブ「古舘伊知郎トーキングブルース2020夏」が開催される。
司会に役者にコメンテーターにと、各方面でマルチに才能を発揮する古舘伊知郎。今夏、伝説のトークライブ「トーキングブルース」が6年ぶり、しかも初の無観客で復活する。混迷する時代に「しゃべりの達人」は何を語るのか。天才テリーにライブへの思いをぶちまけた!
テリー 6年ぶりに「トーキングブルース」やるんですね。
古舘 もともと7月に、2日間か3日間やろうとしてたんですけど、それがコロナで吹っ飛んで。中途半端に何十人かのお客さんを入れて、距離をおいてやるのもなんだから、思い切って無観客にして、配信でやりましょうと。それで、同時配信の設備がある渋谷のライブハウスみたいなところでやることにしたんです。
テリー スポーツはまだしも、トークライブで無観客ってどうなんですか。お客さんの笑いが間になって、次はこんなことをしゃべろうとかありますよね。
古舘 あります、あります。だから絶対、おたつくと思いますよ。昔、「トーキングブルース」の稽古を、自分の部屋で鏡に向かってやったことあるんですよ。もう、つまんなくて15分もたない、やっぱりお客さんがいないと。だから、今回は自分との闘いだと思いますね。
テリー へぇ、おもしろそう。俺、絶対見よう。
古舘 でも、その難行苦行が楽しみでしょうがないんですよ。自分で自分をいじめるのが好きだから。私、「1人SM」の自信がありますから。
テリー アハハハ、出ましたね、古舘節が。
古舘 そもそも東京のお客さんは芸人を甘やかしすぎだと思うんですよ。昔、大阪で「トーキングブルース」をやった時は、バーンと笑ってくれるんだけども、そのあとはシーンと黙って「次、どんな手で来るのか聞いたるわ」「で、またおもろかったら笑ったろ」みたいな感じだから。次、また1回ウケたあとに、バーッとつなぎでしゃべり出せて、オチまでいけるんですよ。でも東京のお客さんは、自分が楽しもうと思いすぎてるから。
テリー 元を取ってやろうとかね。
古舘 そう、コスパを取ろうとするから、しゃべり手に甘いんです。笑ったら、その次、笑うところじゃないのに、楽しもうと思って笑うんですよ。だから、今回の無観客は笑いがかぶさってこないから、もしかしたら正常な状態でやれるんじゃないかと。自分の実力を過信しないで済むような、心の人間ドックをやらされるんじゃないかと、ちょっと楽しみなんです。
テリー カンペはあるの?
古舘 一切ないです。
テリー あ、ないんだ。すごいな、それで2時間以上しゃべり続けるって。何をしゃべるかは全部細かく決まってるんでしょう。
古舘 決めてるところと決まってないところ、両方ですね。覚えるコツがあるんですよ。
テリー どうやるの。
古舘 ローマンルーム法っていう記憶術があって、脳内に1枚の写真を焼き付けるんですよ。例えば、山の中腹にイチゴのショートケーキが置いてあって、そこから眼下を見下ろすと町が見えて、コロナの問題でみんながたいへん悩んでるという情景を。すると、山、イチゴのショートケーキ、コロナっていう関係ない3つの話を、ポンポンポーンと忘れずにつなげていけるんです。そういう映像を脳内に作るんですよね。
(アサヒ芸能8月13・20日合併号「天才テリー伊藤対談」=1=)