テリー 報ステは、やっぱり大変でしたか。
古舘 そうですね。爆笑問題の太田(光)さんにも、よく廊下で会うと「古舘さんのおもしろさが出てない。なんで全部背負い込むんですか」って言われたんですけど、やっぱり背負うんですよ。自分のひと言で、反対の側からガンガン抗議が来るわけですから。誰かを傷つけたりもするし。そういうので、日夜悩んでましたよね。背負ってる分だけ快感もありましたけど。
テリー へぇ、どんな?
古舘 ちょっと追い詰められて、責任感を感じてやってるドキドキ感という快感。だからけっこう脳内麻薬が出てたんじゃないかなって。
テリー それでも辞めたのは何だったの?
古舘 12年やって、自由にしゃべらせてもらいたいなっていうわがままですよね。このままだと「トーキングブルース」もできないし、みたいな。
テリー 女の子とも遊べないしね。
古舘 12年、銀座のクラブにも一度も行けなかったんですよ。あれ、何ですかね。情報番組の司会者なら、女性がいる店で飲んでもいいじゃないですか。でも、ニュースキャスターになると、急に基準が上がって「女なんか、はべらせてバカヤロー」って言われるんです。
テリー その傾向は最近どんどん強まってるよね。俺、最近あんまりコメンテーターもやりたくないんですよ。例えば今回のコロナも最初、横浜にダイヤモンド・プリンセス号が来た時、神奈川の知事も埼玉の知事も「来るな」って言ったでしょう。東日本大震災の時は、日本中で助け合おうという雰囲気になったのに、それは何か変だなと。そういう中でコメントしてるのが気持ち悪いと思ったんです。そもそも俺、そんないい人じゃないし。
古舘 テリーさんなんて昔、CSの番組とかで、大宮のエッチなキャバクラで女の子の胸触ったりしてましたよね。
テリー それ、今もやってます(笑)。だから俺、そんな偉そうなこと言える立場じゃないんですよ。
古舘 でも、正しいことのみが正しいんだっていう世の中はつまんないですよ。僕は邪悪な正義っていうのもあると思ってるんです。やたら「こうじゃなきゃいけない」って自粛警察みたいな人が増えてもね、窮屈じゃないですか。
テリー ねぇ、嫌な時代になったよ。でも、古舘さんは司会をやって、コメンテーターをやって、ライブをやって、役者もやって、やりたいことがたくさんありますよね。
古舘 いや、そうでもなくて。僕はやっぱりトークなんですよ。だから、これからは「トーカー」としてね。
テリー なに、それ。そんな言葉があるの?
古舘 いや、ないと思うんですけれども、私は掲げたんですよ。
テリー ストーカー?
古舘 じゃなくて、スを取ってね(笑)。実は僕も遅ればせながらYouTubeを始めたんですよ。それで最近は「街のすき間を描写する」っていうのをやってるんです。
テリー いいなぁ。もう、おもしろそう。
古舘 ガードレールの5センチぐらいのゆがみを見て、これ、バイクがぶつかったわけでもなさそうだけど何だろうと。それを5分実況するとか、そんな意味のないことを始めたんですよ。そういう都会の「色即是空」を描写していこうかと。
テリー すごいねぇ、ますますトークに磨きをかけていくわけだ。
古舘 僕は噺家さんではないですしね。だから、トーカーとして、これから死ぬまで頑張っていきたいなと。ようやく、これだけになりましたね。
◆テリーからひと言
やっぱり、しゃべりに対する情熱がすごいなぁ。久しぶりの「トーキングブルース」で何が飛び出すかわからないね。今日の対談もヒントにしてくれるらしいし、僕も絶対見ますよ。
(アサヒ芸能8月13・20日合併号「天才テリー伊藤対談」=4=)