昨年4月、東京・池袋で起きた1台の車の暴走。繁華街の大通りで主婦の松永真菜さん(当時31歳)と長女の莉子ちゃん(同3歳)が死亡し、通行人9人が次々と重軽傷を負った事故で、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死傷)に問われた、89歳の旧通産省工業技術院の元院長・飯塚幸三被告の初公判が10月8日に東京地裁で開かれた。
またたく間にネット上に拡散された言葉は「無罪を主張」。車イスで法廷に入ったという飯塚被告は、立ち上がると、真菜さんの夫の拓哉さんと父親の上原義教さんに対し「悲しみとご心痛を思いますと言葉がございません」と謝罪を述べ頭を下げるも、それとは裏腹の起訴事実否認に、ネット上では、日本中の怒りが爆発してしまったような反響が見られた。
「飯塚被告は事件の後、一時、アクセルとブレーキを踏み間違えたかもしれないというような供述をしていたことも報じられていました。ところが公判では『車に何らかの異常が起きて暴走したと思っている』と主張。弁護側も『被告がアクセルを踏み続けた事実はなく、走行制御システムに異常が生じた可能性がある』と補足したんです。それでも事故後は運転していた車には異常は見つかっておらず、ブレーキを踏んだ形跡もなかったと報道されていましたから、この初公判で突然“保身”とも思える主張を始めたことに日本中が怒り心頭となっているんです。被告が元官僚ということから当時、“上級国民”という言葉がバズり、上級国民は逮捕されないのか?という声が飛び交ったのはいまだ記憶に新しいですが、それが再燃している感じです」(週刊誌ライター)
実際には飯塚被告が在宅起訴となったのは、事故後に入院している間に捜査は終了し、証拠隠滅や逃亡の恐れもないからという判断ではあった。
しかし妻と娘というかけがえのない家族を失った拓也さんも「車のせいにするなら謝ってほしくない」と声を震わせた今回の初公判。怒りのやり場を探し求めるような世間の感情をぶつけられたのは、被告が事故を起こした時に乗っていた車のメーカーであるトヨタ自動車だったという。
「当時は車には異常がないことも伝えられていたのに、初公判で車の異常を理由に無罪を主張した飯塚被告はトヨタに喧嘩を売ったような形にも見えるわけです。ですから遺族への同情、被告への怒りに満ちた一般国民は『世界のトヨタ』対“上級国民”のような構図でトヨタを激励するような感情をぶつける声がネット上には多くみられました。もう何としても有罪でないと納得できないという強い感情があふれ出ている状況です」(前出・週刊誌ライター)
某ワイドショーでも、悔しさで涙を流すコメンテーターもいた今回の初公判。飯塚被告本人や家族を激しい言葉で非難する声はいまだ少なくないという。閉廷後の会見で拓哉さんは飯塚被告に今後の公判で「しっかり事実と向き合ってほしい」と直接伝えると語ったという。次回公判は12月3日だが、飯塚被告は拓哉さんの思いに応えることはあるのか。
(飯野さつき)