1955年に初代モデルが誕生したトヨタ・クラウンが今年、生誕60周年を迎える。それを記念してスペシャルカラーをまとった特別仕様車を4月限定で受注することが発表された。
テレビCMを観て驚いた人も多いことだろう。「クラウン生誕60周年記念車」は鮮やかな若草色と澄み渡る青空のような水色のボディカラーで、再びカーファンを驚かせた。
「再び」と書いたのは、これが初めてではないからだ。「いつかはクラウン」とまで謳った貫禄のセダンを、全面ピンクに塗って観衆の度肝を抜いたのは一昨年のこと。現行モデルの発表会での事だった。そのいささかドギツイ色使いに、「単なる話題作り?」とうがった見方をする人も多かったことだろう。しかし、その“手法”はピンクの1台に終わらず、今回の若草色と水色のクラウンに至ったのだ。
なぜ、トヨタは“おやじセダン”の代表であるクラウンを、こんな派手な色に塗るのか。関係者の一人はこう話す。
「あのピンクはドラえもんのひみつ道具“どこでもドア”のピンク色。トヨタが描く未来への思いを象徴的に発信するためのカラーリングなんです」
そう聞いたときは思わず膝を打った。そして、ハイブリッド車やミニバンに目がいきがちな昨今、本来の乗用車の王道であるセダンにももっと注目してほしい‥‥そんなトヨタの思いがあのヴィヴィッドな色に託されているという。
一方で、“黄色いマークX”が登場したのも昨年の秋。訊けばこのカラーリング、同社の商品企画チームが発案というレッキとしたカタログモデル。黄色の意味は、当時人気を集めた初代コロナ・マークIIへのオマージュで、スポーティイメージで若いユーザーにも訴求するのが目的なんだとか。
若者の車離れ、中高年のセダン離れが囁かれる昨今、こうした大胆なイメージの転換が、既存のブランドの価値を新たに掘り起こすきっかけになるのかもしれない。