加齢とともに悩まされる中高年の膝痛原因の大半は「変形性膝関節症」だと言われている。
治療法には、消炎鎮痛剤の使用や、肥満の改善、温熱療法、ヒアルロン酸の関節内注射などが用いられるが、これらはあくまで対症療法、根本的な解決策にはなりにくい。
「変形性膝関節症」で肝心なのは脚の筋肉強化。脚の筋肉が発達していれば、歩行時にかかとが地面に着く瞬間、太腿の筋肉が収縮して膝を持ち上げることで、衝撃を和らげてくれるからだ。しかし、脚の筋肉が少ないと、着地する瞬間の衝撃が、そのまま膝に響いてしまう。そのためには、脚の筋肉を鍛えることが重要となる。
膝を鍛えるには、ウォーキングやゴルフを運動習慣とするのがいいと言われるが、脚の筋肉は、ゆっくりした動きの運動だけでは強化されない。米国タフツ大学のマリア・フィアタロン博士の1990年の報告によると、96歳以上の在宅療養を必要とするお年寄りでも、筋肉を動かす速い運動によって筋力、筋肉の大きさ、筋肉機能が顕著に改善することがわかっている。
お勧めしたいのが、太腿を素早く上げる「太腿上げ運動」だ。腕の両肘を曲げて、骨盤前に手を出す。その手に当たるよう、太腿をできるかぎり早く上げる。これを毎日空いた時間に繰り返すことで、脚の筋肉が鍛えられる。
他にも、今は再生医療「PRP」(多血小板血漿)が、膝治療にも取り入れられてきている。これは、血液から血小板の中の傷を治す成長因子を取り出し、数を増やして体内に戻すことで、痛みや膝の機能が改善される治療法だ。運動している人により高い効果がみられるという報告もある。
膝痛に悩む人は、痛み止めや消炎治療などを利用しながら、できる範囲で運動を心がけたいものだ。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。