加齢で症状を訴える人が増えているのが膝の痛み。中でも一番多いのが「変形性膝関節症」だ。筋肉量の低下などにより、関節のクッションである軟骨がすり減って痛みが生じるという。時間をかけて症状が進行し、一度すり減った軟骨は元に戻らないので、早めの治療が重要になってくる。
一般的に整形外科を受診すると、ヒアルロン酸ナトリウム注射、ステロイド、鎮痛剤等を使用して、リハビリテーションや、靴に入れる治療用の足底板(インソール)の作成などの保存治療が行われる。改善しない場合は、O脚に変形した足をX脚に変える手術「骨切り術」を行う場合もある。
最近では、膝の軟骨の移植も不要で体の負担も少ない、画期的な治療体制も進んでいる。それが「PRP(多血小板血漿)療法」と「APS療法」だ。どちらも自分の血液を使う再生医療で、注目を浴びている。
「PRP療法」は、自分の血液中に含まれる血小板の成長因子が持つ、組織修復能力を利用して自然治癒を目指す治療法で、皮膚科の難治性皮膚潰瘍や床ずれ、やけどなどの皮膚組織の再生促進に使われてきた手法だ。整形外科分野に応用し、現在では「変形性膝関節症」による膝の痛みや炎症、アキレス腱の炎症などの治療にも使われている。
この「PRP療法」を、さらに遠心分離処理をして特殊加工をすることで、軟骨を守る成長因子などを高密度に抽出した治療法が「APS療法」である。自身の血液から作成した「APS」を膝関節内に注射する。
ステロイド剤を使わない、新しい治療法として期待度は高いが、保険適用外の自由診療という点がネックになっている。膝の痛みには様々な治療選択肢があるので、自分に合った療法を選んでみてはいかがだろうか。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。