中高年に多い「ひざの痛み」。加齢でひざが痛くなるのは「軟骨のすり減りが原因」と考えられているが、実は間違っている。軟骨はガラスのような物質で、すり減っても痛みを引き起こすわけではない。
痛みの原因は膝関節の「半月板」にある。大腿骨と脛骨の軟骨の間にある半月板がクッションの役割を果たすが、加齢で軟骨がすり減ると、軟骨と半月板の形が合わなくなることで、半月板が割れてしまうのだ。
この「変形性ひざ関節症」により、割れた半月板の破片が、体重がかかることで横に押し出され、神経や血管の通る靱帯を圧迫するために痛みが生じる。進行するとひざの内側の骨が潰れ、O脚になることも多い。
加齢以外にも、肥満、脚の筋肉の衰えも原因としてある。脚の筋肉を鍛えている人は、かかとが地面に着く瞬間に太腿の筋肉が収縮してひざを持ち上げ、衝撃を和らげてくれるため問題はない。筋肉がサポーター代わりをして、歩行時などのひざへの負担を軽減してくれるのだ。ひざ痛の予防・改善には、脚の筋肉を鍛えることが重要なのである。
治療法としては、初期には消炎鎮痛剤の使用や、肥満の改善、筋力訓練やストレッチなどの運動療法、温熱療法、ヒアルロン酸の関節内注射などがある。
整形外科では再生医療「PRP」(血小板血漿(けっしょう))の治療を受けられることもある。これは、血液から血小板の中の傷を治す成長因子を取り出し、数を増やして体内に戻す治療法だ。ただし、PRP自体は痛み止めでも軟骨を作るわけでもなく、効果そのものも運動している人のほうが高い。
変形がひどい場合の治療としては「人工関節置換術」がある。現在では「疼痛対策」として局所麻酔の「神経ブロック」を導入する施設も増えているので、手術を検討する場合には、調べておくことをお勧めしたい。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。