夏のムシムシした季節に欠かせないエアコン。久しぶりに使用すると、カビ臭い匂いが部屋に充満して‥‥という経験を誰もがしたことあるだろう。実は近年、室内のカビの吸引による病気が増えているのだ。
カビの胞子を大量に吸うことにより、喘息、アトピー性皮膚炎、気管支炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎など、アレルギー症状を引き起こすリスクが高まる。寝具や部屋の掃除をしても、喘息やくしゃみなどのアレルギー症状が改善しない場合は、カビが原因となっている可能性もあるのだ。
最も怖いのはカビによる肺炎「肺真菌症」で、カビが肺に感染することで湿った咳や痰、体重減少などの症状が現れる。重症化すると、血痰が出る「肺アスペルギルス症」を発症する危険も伴う。健康な人の場合は、感染を起こすケースは稀だが、免疫力低下や肺に基礎疾患がある人は感染リスクが高まると考えられているだけに、注意が必要だ。
検査は、胸部エックス線検査や胸部CT、血液検査など多岐にわたる。顕微鏡で痰を観察すると、真菌が発見される場合もある。治療は抗真菌薬を用いるのが一般的だが、「肺アスペルギルス症」が薬で改善しなければ、手術で取り除くことも。
カビからの健康被害を避けるためには、部屋の掃除が重要だ。まずは、エアコン内部と台所や冷蔵庫の裏。特に水道の蛇口周りにはカビがはびこりやすい。
湿度対策もポイント。室内の湿度を50~60%程度に保てば、カビは生育しにくい。乾燥対策として加湿器を年中使用している人もいるが、かえってカビが増殖するリスクを高める。
あとは、換気をすることも忘れずに。窓を開けたり、扇風機を使用するなど、室内の空気を循環させる工夫をしよう。掃除の際は、マスクや軍手の使用も心がけたいところだ。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。