新型コロナウイルス感染症でクローズアップされている「肺炎」。ガン、心疾患に続く日本人の死亡原因の第3位となっているほどだ。
中でも近年、注目を浴びているのが、「誤嚥性肺炎」。高齢患者の肺炎の種類を調べたデータでは、80代の約8割、90歳以上の9.5割が「誤嚥性肺炎」だったという報告もある。
本来は口から喉、食道を通って胃に送られるはずの食べ物や飲み物、唾液などが誤って気管や肺に入ることで、そこに含まれていた病原体が誤嚥性肺炎を引き起こす。
誤嚥は加齢によって喉の筋力が低下するために起きる。気管の入り口は、基本的に飲食物を飲み込む時は閉じられているが、加齢で喉の機能が衰えてくると、隙間ができ、飲食物や唾液が気管に落ちやすくなってしまう。
しかも、誤嚥性肺炎の発症者が増えるのは60代以降に多いが、実は誤嚥は40代からすでに始まっているのだ。その兆候は、何か食べたり飲んだりしている時に、むせたり咳き込んだりするかで見極めてほしい。
喉の老化は簡単なチェックテストで調べることができる。水を1口飲んで口の中を湿らせる。そして、指を喉仏に当てて、30秒間で何回唾液を飲み込めるか確認。一般的な目安は、30代で9回、40代で8回、50代で7回、60代で6回、70代で5回、80代以上で4回以下である。
喉の年齢が衰えている人にお勧めしたいのが、新聞や本を声に出して読むことだ。
誤嚥を防ぐためには、唾液量を増やすことが必要で、よくかんで食べる、飴なども有効である。特にこれからの季節は乾燥しやすいため、加湿器なども上手に利用したい。
ちなみに「誤嚥性肺炎」は咳や痰が主な症状なので、風邪と区別がつきにくい。そのため、咳が2週間続いていたら、医療機関の受診が必要となる。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。