「最近、突然咳き込んだり、乾いた咳が出て息苦しい」──。これは「過敏性肺炎」ではないか。咳や発熱などの症状が、新型コロナウイルスや夏風邪と似ており、判別が難しいだけに厄介と言えよう。
両者の違いは、新型コロナウイルスは、細菌やウイルスが原因で感染するが、「過敏性肺炎」はアレルギー性の肺炎という点にある。カビやホコリなど、特定の化学物質などの抗原を吸い込むことで発症するのだ。鳥のフンが原因の場合もある。
抗原となっている原因物質のない場所に行くと、症状が改善するのもこの病気の特徴だ。例えば、家でエアコンを止めて窓を開けた場合や、会社では異常がないのに、帰宅すると突然咳が出るなど、ステイホーム中に症状を訴える人も多い。
特に夏場に多いのが「夏型過敏性肺炎」だ。これはトリコスポロンというカビなどを吸い込むことで発症する。トリコスポロンは、エアコン、台所、浴室など、湿気の多い場所で繁殖する。この原因物質が、空気と一緒に肺の奥の細気管支や肺胞に入り込むことで炎症が起きるのだ。症状としては乾いた咳、発熱、息切れなどが見られる。
診断は、胸部レントゲンやCT検査で肺の状態を確認、その後、血液検査で抗原の種類を調べる。重症の場合は、ステロイド薬で症状を軽減する。
この病気で最も重要なのはカビなどの抗原の原因を回避することだ。
まずは部屋の換気、次に、自宅の水回りやエアコンの掃除をすることだ。ハウスクリーニング業者に依頼してしまうのも有効だろう。会社の空調が原因の場合は、対処が難しいので、医師と相談するのが望ましい。
毎年、夏場に乾いた咳に悩まされている人は、一度医療機関を受診してみたほうがいいだろう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。