一日中体がだるくて眠い、どうもやる気が出ない──それは「秋うつ」の症状かもしれない。
秋は気分が落ち込んだり体調がすぐれなかったりしがちとなる。そんな季節的原因となるうつ症状が「季節性感情障害(Seasonal AffectiveDisorder)だ。略してSADと呼ぶ。1984年に、アメリカの精神医学者、ノーマン・ローゼンタールによって発表された。
一般的なうつ病では、食欲がなくなり眠れなくなるのに対し、「秋うつ」の場合は食欲が増加し、甘いモノがやたらに欲しくなったりする。また過食気味になり、十分寝てもスッキリしなかったりする。
その理由は、夏に比べて日照時間が減少するためだと言われ、日照量が減ると「ハッピーホルモン」と呼ばれる「セロトニン」の分泌量が減ると考えられている。
セロトニンは食欲や睡眠、気分、記憶などを促進する神経伝達物質で、痛みの信号を脳に伝える経路を遮断し、麻痺させる役割も果たしている。
その一方で、セロトニンが減ることで、さまざまな欲が停滞し、やる気が失われるばかりか、ふだんはあまり感じない些細な痛みがダイレクトに脳に伝わることで、体がだるいという感覚にも陥りやすくなる。
予防・症状の改善には、セロトニンの分泌量を増やすために、日光浴がオススメだ。朝起きたらカーテンを開け、しばらく光を浴びる。自宅の照明を明るくしたり、軽い運動を取り入れるのも有効だ。
食事面では、トリプトファンという成分を含むヨーグルトやチーズ、みそなどの発酵食品を積極的に摂取すること。太陽光が減ると、ビタミンD3が不足することでSADに似た症状を引き起こすこともあるため、サプリメントなどを上手に活用したい。一般的なうつ病とは原因や症状もまったく異なるため、早めの対策が必要だ。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。