〈若大将〉と言えば、昨今では巨人の原辰徳監督を思い浮かべる方も多いだろうが、もとは、歌手・俳優の加山雄三についた愛称である。戦前・戦後の日本映画界を代表するスター俳優・上原謙(故人)を父親に持ち、それを継承するに十分な才能と人気を兼ね備え、〈若大将〉の名に相応しい人物だ。
その加山が、フリーアナの古舘伊知郎、タレントの田中律子とともにMCを務めた、「MJ-MUSIC JOURNAL」(フジテレビ系)という1992年から94年に放送された音楽情報番組があった。それまで、時代の趨勢を担っていた、ランキング形式の音楽番組とは一線を画し、特定のアーティストをテーマに特集を組むといった、新時代の幕開け的存在の音楽番組でもあった。
前述の古舘が、自身のYouTubeチャンネル〈古舘伊知郎チャンネル〉の、3月23日投稿回で「MJ」を回顧。加山の若大将ぶりエピソードが明かされた。
古舘いわく、ある収録前に加山の楽屋を挨拶に訪ねたところ、奥に座る加山と入口のドアの間に、ダークスーツに身を包んだ銀行系の方々が5、6人いたそうだ。何やら物々しい雰囲気に、事業について深刻な話でもしているのかと、古舘は加山に挨拶して早々に立ち去ろうと背伸びしたところ、目に映った加山は赤いギターを持って、ポロポロとつま弾いていたのだとか…。
古舘の話を聞いていた動画スタッフが「そんなことあります?」と訊ねると、「ホント、ホント!加山さんにしてみたら、シビアな打合せをされている時でも、ギターは手放さないで、オレは加山雄三ギターの若大将っていうのが1つのメルクマールですからね」と、軽妙に例えてみせた古舘。
近年では、メディア出演が減少傾向にある加山。ふたたび、若大将の元気な伸びのある歌声に包まれたい気分になった。
(ユーチューブライター・所ひで)