昨シーズン最下位に沈んだヤクルトが小川淳司監督を続投させたのは、次期監督最有力候補だった荒木大輔の退団と、宮本慎也の現役引退が重なったからだった。打撃コーチに同期入団の杉村繁を呼び戻すとともに、フロントの推す高津臣吾を投手コーチに入れたのも、まだまだ監督として手腕を発揮したいという意向があるからだ。
近い将来、ヤクルトの監督は宮本慎也になることが内定している。その時のために、高津を現場復帰させて地ならしをしたいという球団の思惑もある。加えて、野村克也時代の残党である“野村人脈”のコーチ陣は、チームにうまく入り込むことで延命を図り、チームの中枢を担っている。野村──古田(敦也)に批判的なスタッフがいなくなった現在、チーム強化がどこまでできるのか疑問に思える。
最後に、キャンプを巡ってきた評論家が口をそろえて言うのは、「今年の阪神は上がり目なし」というものだった。FAで久保を引き抜かれ、スタンリッジとの交渉は金銭面で折り合いがつかず、巨人がバカにする新外国人ゴメスを2億7000万円で獲得。さらには、投手の久保の人的補償で獲得したのがキャッチャーの鶴岡一成。誰が考えてもおかしな選手補強だが、その中心で指示を出していたのが、中村勝広GMだった。
「なぜか、阪神はFAで捕手ばかり取っている。藤井彰人、日高剛に加えて、今年は鶴岡。何を考えているのか」(阪神OB)
中村GMといえば、“北関東グループ”を築き上げ、球団内に君臨している。しかし、弊害を指摘する声もある。
「もともと、中村GMが千葉県成東高校出身だったことから、同郷の我孫子出身の和田豊監督のサポート役としてGMに就任。また、習志野高校の掛布雅之氏を臨時コーチに招き入れたのも中村GMだった。安藤統男元OB会長も含め、阪神の中枢は北関東グループが占めていて、誰もGMを批判できない」
さらに、阪神の唯一の対抗勢力と言われるのが、広島同様、法大OB人脈だ。
「法大OBには、今季から守備走塁コーチに加わった高代氏の他に、黒田正宏ヘッドコーチがいる。ところが、本来は“うるさ型”で鳴る高代氏は、岡田彰布監督時代にヘッドコーチを務めていて、中村GMにはまったく意見ができない。現状、中村GMは掛布氏を次期監督に推したいようですが、岡田氏にも含みを残している。それだけに中村GMの横暴に誰も異論を主張できない。これではチーム浮上の目はないでしょう」(阪神番記者)
個々のチームの狙いが如実に表れたセ・リーグの人脈地図。戦力よりコーチ人事にウエイトを置いているチームに未来はない。
◆スポーツライター・永谷脩