時に後輩からカネを徴収したくなるような状況でも、有吉弘行はグッと抑えているという。
番組ロケでハワイに行くことになり、羽田で飛行機の待ち時間に、マシンガンズの西堀亮と寿司を食べた時のことだ。
「『今から日本を離れるし、寿司食ってさ』なんつって。で、空港にある回転寿司、値段が高いのよ。ウニとかになると800円。西堀がさ、普通の回転寿司感覚で食うっていうか。150円くらいの皿の感じで結構、食うわけ。『ウニうまいなぁ、もう一丁いっちゃおう』みたいな。それで1600円だからね」
有吉は後輩の遠慮なさに言及するのだ。さらに有吉は言う。
「本当に150円の感覚で、バンバンいくんだよ。でも『西堀、さっきから高いのばっかりいってねぇか』って言うのはダサいじゃん。だから、ちょっとモヤモヤしながら食べてた。俺が安いのを頼むっていう調整法だよ。先輩と後輩の垣根がなくなってる」
秘かに怒っていたのだ。
有吉とは違い、おごる気マンマンながら、どうもうまくいかない芸人もいた。
スピードワゴンの小沢一敬が語る。
「お好み焼き屋に後輩たちと行ったんですよ。そしたら、菅田将暉君みたいな子がご飯食べに来てて。女の子といたんです。こっちは後輩3~4人でいたんだけど『あれ、菅田さんですか』みたいな。で、店長さんに『あっちの支払い、俺につけといて』って言って。『東京って、そういう街だからさ』みたいな、格好つけて。そしたらね、帰り際に『小沢さん、今日ご馳走さまでした』って言われたんだけど、全く知らないヤツだったの。ただちょっと髪型と雰囲気が似てるだけのヤツにおごっちゃって…」
笑い飛ばす小沢と同じく、おぎやはぎの矢作兼も格好をつけたつもりが、スベッてしまったことがある。
矢作は妻と自宅近所のカフェで、たんぽぽの川村エミ子らに出くわした。
「芸人ってすごいね。すぐにさ、女の子なんだけど後輩だから、立ち上がってさ。『あ、おはようございます!』って」
会計の際、矢作は後輩におごっていないことに気が付いた。
「たけしさんパターン。だいたい、(普段は)後輩と店がかぶらないじゃん。会うことないのよ。『これ、チャンスだ』と思ってさ。奥さんに『よく芸人の先輩がおごるやつ、かっこいいやつできるよ』って」
ここぞとばかりにおごろうとすると、会計がわずか2800円だった。
「超恥ずかしかった。(少額すぎて)払おうかどうしようか、迷ったのよ」
(坂下ブーラン)
1969年生まれのテレビディレクター。東京都出身。専門学校卒業後、長寿バラエティー番組のADを経て、高視聴率ドキュメントバラエティーの演出を担当。そのほか深夜番組、BS番組の企画制作などなど。現在、某アイドルグループのYouTube動画を制作、視聴回数の爆発を目指して奮闘中。