芸人界には、先輩は後輩におごるものだという慣習がある。例えば、ビートたけしは最も後輩たちにご馳走してきた芸人の1人だろう。
伝説の番組「オレたちひょうきん族」に出演していたころ、弟子を大勢連れ、毎晩のように浅草で飲み歩いた。その際、後輩のみならず、お店にいるお客さん全員におごり、面識はなくとも挨拶をしに来る芸人にまでお小遣いをあげていたという。
さらに、店から出ると、あたりを酔っ払って歩いている女性にもお小遣いをあげた。弟子が「お金を使いすぎですよ!」と注意しても、「オイラはよぉ…ここ(浅草)に育ててもらったから返してんだよ」とやめなかった。
千鳥の大悟は、お金がないころから、後輩たちにおごっていた。相方のノブによると、
「大悟は(月給を)前半で使うんですよ。ご飯に行く後輩らに、お寿司とか、おごっちゃうんです」
との大盤振る舞いだったそうだ。
デビュー当時から、大悟にかわいがってもらっている南海キャンディーズの山里亮太は、大阪時代をこう振り返っている。
「初歩的なオーディションに受かっただけでも、大悟さんが『今日は祝いじゃ』って、『わし、あぶく銭が入ったから、今日、全部使わないとあかんねん。ちょっと下ろしてくる』って言って、バーッて行くところが、消費者金融なんですよ」
そして大悟は山里を「回らない寿司店」へ連れて行くと、
「わし、トロ嫌いやわ~」
と自分は、カッパ、かんぴょうばかりを食べて我慢し、後輩をかわいがった。
おごり文化が後輩を育てるとともに、自らのネタを増やし続けているのだろう。
(坂下ブーラン)
1969年生まれのテレビディレクター。東京都出身。専門学校卒業後、長寿バラエティー番組のADを経て、高視聴率ドキュメントバラエティーの演出を担当。そのほか深夜番組、BS番組の企画制作などなど。現在、某アイドルグループのYouTube動画を制作、視聴回数の爆発を目指して奮闘中。