こうした経緯からすれば、寺島は松よりもむしろ、染五郎こそ怨敵のはずなのだが‥‥。
「寺島は一時期、自殺を考えたことまであったそうです。そして染五郎の披露宴が行われた同年11月には、当てつけのように彼との交際を赤裸々につづった暴露本『体内時計』(主婦と生活社)を発売した。それがきっかけで尾上家と松本家は絶縁状態になり、染五郎の披露宴を菊五郎夫妻は欠席している。当時、松は周囲に『あの女、何考えてるの!』と怒りをぶちまけていたといいます」(別の芸能記者)
芸能評論家の三杉武氏が解説する。
「松にとっては幼い頃にかわいがってくれたお姉さんだっただけになおさら、寺島が強烈に非難してくる姿勢を受け入れられなかったのだと思います。女性同士ならではの対抗心なのでしょう。真実はどうあれ、完全に加害者と被害者という構図も作られてしまいましたからね」
当時に話を戻すと、松は月9ドラマ「ロングバケーション」や「ラブジェネレーション」(ともにフジテレビ系)など話題作に出演し続け、女優としての地位を確立していった。一方、リードされていた寺島だが、“染五郎ショック”を払拭するや猛然と巻き返したのだ。
ともに03年公開の映画「赤目四十八瀧心中未遂」(赤目製作所)と「ヴァイブレータ」(ステューディオ スリー、シネカノン)で全裸セックスシーンを披露し、女優として評価を高める。そして10年公開の「キャタピラー」(若松プロダクション、スコーレ)で、「ベルリン国際映画祭」最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞するまで上り詰めたのだ。プライベートでも07年に結婚したフランス人夫との間に長男を授かるなど、公私とも充実している。
「松は寺島が脱いで新境地を開いた2本の作品について当時、『何を考えてるか理解できない』とバカにしていた。しかし彼女も、12年公開の『夢売るふたり』(アスミック・エース)で衝撃的なシーンを披露。過去のいきさつを知る関係者の間では『寺島を意識したのは明らか』との声も上がりました。寺島は、松の艶技について上から目線で周囲に『あの子もやればできるんじゃない』と嘲笑していたといいます」(映画関係者)
少女時代から数えて“30年遺恨”となる2人だが、いっそ共演して女優魂で火花を散らせば“少しも寒くない”作品が生まれるのではなかろうか。