「アイドルは夢を売る仕事」というのは、もはや過去の認識なのだろうか。
バラエティー番組に出演して「毎日、お風呂に入らない」とか「部屋が散らかり放題」なんてことを臆面もなく話す現役アイドルを見ると、「熱愛発覚!」などというニュースよりも、よっぽどファンを裏切っているような気がするのだが。
さすがに昔のように「アイドルはトイレにも行かない」という幻想を抱くファンはいないだろうけど、それにしても「会いに行ける」などとアイドルのカジュアル化が進んだことで、すっかりアイドルが憧れや崇拝の対象ではなくなってしまった。
そもそも昔はアイドルに限らず、芸能人のプライベートはベールに包まれており、雑誌やテレビでのインタビューでも、本当はホルモンが好物でも「好きな料理 オムライス」などとイメージ優先で答えるのが常だった。それが「肌着は1週間くらい同じのを着てる」みたいな話を堂々とする時代になるとは…。
収入や貯金に関する話もそう。「どのくらい稼いでんの?」「どんくらい貯まってんの?」などという質問は、アイドルにはタブー。お金にまつわることは「下世話なこと」という認識があるので、そんな話をアイドル自らするのは、ひと昔前では考えられなかったのだ。
ある時、「めざましテレビ」(フジテレビ系)を見ていたら、進研ゼミのCMに出演するなにわ男子へのインタビューの中で、メンバーに「子供たちのやる気を応援する」というCMのコンセプトに合わせた「モチベーションをアップさせる方法は?」という質問が。
するとその中のひとり、西畑大悟が「ぼくは通帳記入です」と答えていたのだった。「1カ月に1回、月末に必ず記帳する」そうで、その時の様子を再現し、通帳を見ながら「あ、振り込まれたな。あ、うん。アハハー」と嬉しそうに笑っていた。
ファンからすれば「可愛い!」と悶絶モノかもしれないが、通帳を見てニンマリしながら自分の稼ぎを確認するアイドルなど、あまりにも現実的すぎて夢がない。ましてや、ジャニーズアイドルがそんなことを言うなんて、と。
で、思い出したのが「行列のできる相談所」(日本テレビ系)でのやりとりだった。「ジャニーズの後輩を誘ってランチに行ったりする?」と聞かれた岸優太(King & Prince)が「面倒見てる後輩とか正直、いなくて。だからこそ、メチャクチャ黒字でしたね、今年は」と答えていたのだ。
これにMCの後藤輝基(フットボールアワー)から「流して、お金を。今まで先輩にやってもらったし」と注意をうながす。ところが岸は「恩を返す、みたいな(風習は)あるんですけど、自分は特に支出を抑えるタイプの人間で。自分の生活ですら、いっぱいいっぱいなんです」とキッパリ。こういった発言は、「金にセコい」と後輩にイジられるようなお笑い芸人がするものだと思っていたが、まもなく退所するとはいえ、ジャニーズアイドルが…と驚きである。
そういえば、昨年の「しゃべくり007」(日本テレビ系)では、菊池風磨(Sexy Zone)が、先輩の二宮和也に関して「ジャニーズの後輩を家に集めて、負けたら年収を発表するというルールでゲーム大会をしている」ことを暴露した。しかも当の二宮は「自分の年収を見せたい、という気持ちがある」ため、最終的にはわざとゲームに負けて年収を明かしているといい、「どうやって(後輩の)マウント取れるかって言ったら、カネしかない」と言い切っていたのである。
二宮はこのやりとりがあった直後の「24時間テレビ45」でメインパーソナリティーを務めていたこともあり、「愛は地球を救う」とはほど遠い、下世話な話に違和感を覚えたものだった。
アイドルの庶民化にゲンナリ。聖子ちゃんや明菜ちゃんの時代はよかったと、つくづく。
(堀江南)