芸能

中森明菜 孤高の歌姫の「光と影」(2)雨中の熱唱で客を引き込む

20140814_21g

「あなた、歌は上手だけど顔が子供っぽいから無理ね。童謡でも歌っていたほうがいいんじゃない?」

 審査員の松田トシが明菜に辛らつな言葉を浴びせる。壇上の明菜はひるむこともなく、こう返した。

「童謡を歌えとおっしゃいますが、『スタ誕』では童謡は受けつけてくれないんじゃないですか?」

 これが「スタ誕」の放送史に残る激烈なバトルである。その前には「顔に若々しさがない」と酷評した松田だが、180度違う批判をしてまで“明菜嫌い”を徹底させていた。

「何でこの子が予選落ちだろうと不思議だったね。松田さんとの確執は聞いていたけど、絶対、通したほうがいいよって言ったんだ」

 日本で初めて「ボイストレーナー」という肩書を持った大本恭敬が振り返る。大本は「スタ誕」の地区予選でピアノ演奏をしながら、審査員も兼ねていた。有楽町・よみうりホールに現れた明菜は、大本をうならせるだけの歌声を持っていた。

「テレビに出る前の予選も何回か落ちているし、テレビ予選では松田さんの点数が厳しかったから決戦へ進めなかった。ようやく3度目の挑戦で最高得点を出して決戦に行けたんだから」

 デビューが決まると、恵比寿にある大本の自宅で1日置きのレッスン。1回につき30分から1時間程度のレッスンだったが、明菜の器用さは強く印象に残っている。

「最初からうまかったよ。それと、いわゆるノドに引っかけて歌うクセがあるんだけど、それを『少女A』のサビの♪じれったい、じれったい‥‥のように、ピタッとキメにすることができた。自分で自分の武器を知っている子だったね」

 デビューしてからも忙しいスケジュールの合間に大本のもとへ向かう。大本が驚いたのは、豊島園で行われた歌謡ショーでのこと。特設ステージでは歌手たちが次々と出番をこなすが、明菜の番になって激しい雨が降ってきた。

「ずぶ濡れになりながら、それでもステージの前までせり出して『帰らないで、私の歌を聴いて!』と体全体で訴えているような迫力があったね」

 デビュー4年目あたりから「明菜ビブラート」と呼ばれる歌唱法に変化した。これも大本に言わせれば、リスナーに対して「私の歌を聴いて」という“心のうねり”がもたらすものであるらしい。

 大本は同時期に小泉今日子のレッスンも担当していたが、同学年である2人のこんな場面を見た。

「明菜が『キョンキョンはさぁ』って話しかけてたんだけど、小泉のほうが1カ月半くらいデビューが早い。同い年でも、そういう口のきき方をしたらダメだって怒ったんだよ」

 明菜はプイッと横を向き、ふくれた表情をしていた。それでも、それから10年以上が過ぎ、深夜のゲイバーで偶然に再会すると、泣きながら大本のもとへ駆け寄ってきた。

「いろいろあって落ち込んでいた時期だったからね。僕は『負けるなよ』って励まして。あれが彼女に会った最後だった」

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
なんだこりゃ!岡田将生の電撃結婚を「完全スルー」した「めざましテレビ」の担当は元カノ鈴木唯アナ
2
東京ドームで観客半分の「プレミア12」にサッカーファンが「シラケる」挑発バトル
3
大谷翔平「MVP受賞映像」で「真美子夫人の妊娠説」が噴出したワケ
4
「反大谷翔平」の上原浩治に「直球質問」をぶつけたら返ってきた「絵文字」が…
5
大谷翔平「3度目のメジャーMVP」でもかなわない「凱旋帰国」の高すぎるハードルと「出禁」問題