夏の風物詩といえば、花火。打ち上がった瞬間、花火業者の屋号「玉屋」から「たまや~!」という掛け声を今もよく耳にする。ところが元祖は「かぎや~!」であり、「鍵屋」の技術こそ、今も受け継がれている…と知っている人はどれだけいるだろうか。
女優でお江戸系ユーチューバーの堀口茉純が、自身のYouTubeチャンネル〈ほーりーとお江戸、いいね!〉で、江戸時代の花火事情を解説している。
「玉屋と鍵屋は江戸に実在した花火屋の屋号です。歴史が古いのは鍵屋。鍵屋が6代目になった時に登場したのが玉屋です。隅田川の花火は両国橋を挟んで上流を玉屋が、下流を鍵屋が受け持つことになるんですが、人気は玉屋の方が上だったようで、『橋の上 玉や玉やの声ばかり なぜに鍵やと いわぬ情なし』なんて歌も残っています。ただ、玉屋は火事を出してしまったので、全財産没収の上、江戸追放になり、わずか一代で廃業になってしまったんですね」
この狂歌は玉屋への愛情を示したもので、「情」に「錠」をかけた詠み手の洒落を含んでいると言われている。歳時記に詳しいライターが言う。
「判官贔屓好きの日本人らしい名残と言えるかもしれません。ちなみに、東京・江戸川区の老舗花火業者『宗家花火鍵屋』の当主は15代目・天野安喜子さん。新型コロナウイルスの影響から4年ぶりに、7月29日の『隅田川花火大会』開催が決まっています。天野さんは『待ち望んでいた皆さんに、質の高い花火をお見せしたい』と意気込みを口にしています」
ぜひ「かぎや~!」と声を発してみては。
(所ひで/ユーチューブライター)