土俵人生の岐路に立たされている。
去る大相撲七月場所においてまたしても休場に追い込まれた横綱鶴竜。場所後の横綱審議委員会では「次に出る場所が勝負。そこで休場などしたら意見は申し上げないといけない」と苦言を呈されている。また、師匠の井筒親方にも「横綱らしい成績を出せなければ覚悟しないといけない」と明言されるなど現役続行に向けて早くも土俵際に追い込まれている。本人が話したところでは、
「ケガをしてからは初めてです」
という8月30日の錣山部屋での出稽古でも、10日ほど前に「ようやく普通に歩けるようになった」とのことで、九月場所への出場の可否を探っている状況で、仮に出場できたとしても、今までの不振を払拭するような成績を挙げるのは厳しいだろう。そうなった場合、必然的に土俵を下りる決断をすることになるのだが、今のままでは「引退」をすることは鶴竜には許されない。
現行の制度では、日本に帰化していない外国人力士は現役を退いた後に親方として日本相撲協会に残ることが許されていない。
最近になって白鵬が日本に帰化することを決意したというのも、この決まりに従うためである。ただ、鶴竜は日本に帰化してはいない。つまり、このままいくと親方になれずに協会を去ってしまうことになってしまう。言うなれば「廃業」である。
ここ最近は休場による成績不振ばかりが取り上げられる鶴竜ではあるが、番付最高の地位である横綱まで上り詰めたというのは立派な実績である。そんな力士を引き留めることもなく追い出してしまうことは、協会にとっても少なからず損失となるのではないか。
「引退」か、それとも「廃業」か。九月場所の鶴竜の成績次第では、この問題が議論されることになるかもしれない。
(戸畑マサシ)