芸能

後輩にワイロ攻勢をかけて漫才協会の会長になってやる!/40年経っても売れない浅草芸人の「破天荒交遊録」(10)

 オイラ、ビックボーイズのなべかずおが所属する漫才協会は今や、日の出の勢い。錦鯉やら小島よしおちゃんやら、カミナリやら、テレビの売れっ子が次々と入会してくる。

 そこでふと、オイラは考えた。ビックボーイズが手っ取り早く「有名」になるウルトラミラクルを起こすのは、この漫才協会の会長になるのが近道なんじゃないか。そもそもビックボーイズは30年も漫才協会の会員だし、もうオイラたちよりもキャリアが長い先輩は、前会長の青空球児師匠をはじめ、ほんのわずかしかいない。会長になる資格は十分にあるのだ。

 ただ、ネックは人望がないことだけ。そんなに長くいて理事にすらなれないのは、みんなから尊敬されてないからだ。このギャップを埋めるのは、やはり「カネ」しかない。先輩にはお中元、お歳暮のプレゼント攻勢をかけて、後輩連中はオゴりまくる。いつの時代も若手はタダ飲みタダ食いには弱いはずだ。もちろん、カネもバラまく。たぶん漫才協会の会長選でのカネのやり取りは、贈収賄には引っかからないはずだ。

 オゴりまくった若手たちの署名を集めて嘆願書を協会に提出した上で、東洋館の舞台に上がったら、

「私は会長を目指してます。支持してくださるお客さんは、拍手してください」

 と言って拍手をもらえば、否が応でも「なべを会長に」という機運は盛り上がるんじゃないか。問題は今年、会長に就任したばかりのナイツ塙ちゃんを、どう説得するかだ。

「オイラを助けると思って、一期だけやらしてくんない?」

 先輩が頼めば、むげには断れないだろう。

 こうしてオイラが新会長に就任して華々しくマスコミで報道され、たちまちオイラは「売れっ子」に、と。

 ま、活動資金は女房から借りるしかないか。コロナで営業も減って、貯金もないし。しかし、さんざ「愛人問題」で怒らせた女房が、はたして「ウン」と言ってくれるか。こちの方が会長就任よりよっぽど難しいかもしれない。

なべかずお:1957年(昭和32年)、北海道滝川市の生活保護家庭で生まれる。レンガ職人、とび職人など様々な仕事を経て1984年、浅草フランス座でお笑い芸人の修業を開始。その後、羽生愁平と漫才コンビ「ビックボーイズ」を結成し、現在に至る。2006年には「真打」昇進。2008年にラップCD「たまらんぜ」をリリースし、2023年には自伝本「たまらんぜ!芸人人生七転び八転び」(山中企画)を出版。漫才協会には30年以上も在籍しているが、後輩はどんどん理事になり、ついには約10年後輩のナイツ塙宣之が会長になったのに、自身は一度も理事にもなったことがなく、「永遠のヒラ会員」と呼ばれる。

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