また後輩の話になるけど、本格派漫才として「笑点」なんかにもちょくちょく出演しているロケット団ね。この前の漫才協会の総会では、その三浦ちゃんが協会副会長に、倉本ちゃんが理事になってて、とっくにオイラは追い抜かれてるんだけど、彼らもありがたい後輩だよね。
東洋館の舞台では、よくオイラをネタにイジってくれるの。三浦ちゃんが、
「先輩ながら、なべさんほど空気は読めない、ネタはつまらない、下ネタは下品な、尊敬したくてもできない人物はいない」
なんてやりだすでしょ。そうするとオイラ、ソデから舞台に顔出して、
「バカなこと言ってんじゃねーよ!」
と抗議する。それでお客がドッとウケてくれる。
バカにされてハラが立たないかって? とんでもない。嬉しいよ。イジってくれるだけで。
たださ、いつオイラのネタを出してくれるかわかんないから、ロケット団のネタ中はずっと、ソデでスタンバってるの。あれがシンドいかな。結局、オイラのネタが出ないまま終わっちゃう日もあるし。
ナイツも何かっていうと、オイラのことをイジってくれる。60過ぎてもオイラ、けっこうアッチの方が元気で、小銭入れの裏にバイアグラ貼り付けて持ち歩いてたりするわけ。それを知ってた塙ちゃんが、オイラを呼んでくれたテレビ番組の収録でバラしたの。
「なべさんはスゴいですよ。この年になってもバイアグラ持ち歩いてるんですから」
テレビでイジってもらった、って喜んじゃったね。ところがオンエアを見たら、そこのところが完全にカットされてた。いいオッサンがバイアグラ使ってるって、ウケるよりも引かれるだろう、って局の人が判断したんだろうな。
後輩がフォローしてくれても、なかな結果を出せないのよ。
なべかずお:1957年(昭和32年)、北海道滝川市の生活保護家庭で生まれる。レンガ職人、とび職人など様々な仕事を経て1984年、浅草フランス座でお笑い芸人の修業を開始。その後、羽生愁平と漫才コンビ「ビックボーイズ」を結成し、現在に至る。2006年には「真打」昇進。2008年にラップCD「たまらんぜ」をリリースし、2023年には自伝本「たまらんぜ!芸人人生七転び八転び」(山中企画)を出版。漫才協会には30年以上も在籍しているが、後輩はどんどん理事になり、ついには約10年後輩のナイツ塙宣之が会長になったのに、自身は一度も理事にもなったことがなく、「永遠のヒラ会員」と呼ばれる。