難航している侍ジャパンの新監督に、意外な名前が浮上してきた。日米の球界を股にかけて活躍した上原浩治氏である。ベテランのスポーツライターが、その裏事情を次のように説明する。
「これまで工藤公康氏、高橋由伸氏などが監督候補になっているが、なかなか首を縦に振らないようです。なにしろ、出身母体であるソフトバンクや巨人が優勝争いから早々に脱落する戦いぶり。オフに藤本博史監督や原辰徳監督の責任論に発展する可能性があるからです。となれば、再登板の芽が出てくる。すんなりと侍の監督は引き受けられないでしょうね」
今回、侍の監督を引き受けるのは、火中の栗を拾うようなものだ。来年11月には前回優勝したプレミア12があるが、今年のWBCで世界一に輝いた侍ジャパンだけに、優勝が義務付けられている。だが、その大会に現段階では、右肘側副靱帯を痛めた大谷翔平が出場するのは難しい。打者大谷だけなら出場可能だろうが、トミー・ジョン手術を受ければ、その期間は投手復帰へのリハビリ期間となる。現実的には不参加だろう。
大谷が出場しなければ他のメジャー組も、所属球団が出場に難色を示す可能性が出てくる。WBCでも分かるように、メジャー組がいなければ好成績を残すのは難しい。そこで持ち上がったのが、米球界にも顔が利く上原氏だというのだ。
「レッドソックスで世界一のメンバーになり、米球界でもリスペクトされています。仮に上原氏が侍の監督なれば、レッドソックスは吉田正尚の出場を許可するしかない。また、今オフにポスティングでメジャー移籍が濃厚な山本由伸や今永昇太も上原監督なら、所属球団も出場に前向きになる可能性がある。他の人間ならそうはいきませんよ」(前出・ベテランスポーツライター)
上原氏に指導者経験はないが、その卓越した野球理論、歯に衣着せぬ言動は、球界内で一目置かれている。スター軍団をまとめるには、うってつけの人材かもしれない。
11月にはアジアプロ野球チャンピオンシップが開催され、そこから新生侍ジャパンが動き出す。その前にもちろん新監督は決定するだろうが、「上原ジャパン」を見てみたい気がする。
(阿部勝彦)