昨年7月、遊説中に狙撃され死去した安倍晋三元総理の政治資金を無税で引き継いだ昭恵夫人の「手際のよさ」が波紋を広げている。
昭恵氏は事件が発生した7月8日、安倍元総理が代表を務めていた資金管理団体「晋和会」と「自民党山口県第4選挙区支部」の代表に即日就任。晋和会については資金管理団体から政治団体に変更した上で、所在地をそれまでの議員会館から東京都渋谷区にある自宅に移すという早業をやってのけたのだ。
その後の資金移動についても、手際は抜群だった。これまでに公表された政治資金収支報告書によれば、昨年、晋和会には安倍元総理と関係のあった5つの政治団体から総額1億8000万円を超える資金が、寄付の形で移された。さらに今年1月には、第4支部から2700万円を超える資金が晋和会に寄付され、1月31日付で第4支部は解散となっている。
政治団体が政治資金を継承する場合、課税の対象とはならない。つまり昭恵氏は、2億円を超えるカネを無税で「相続」した格好になるのだ。
一連の問題を取材してきた全国紙政治部記者が指摘する。
「森友学園事件への関与が疑われた時も、桜を見る会への出席が問題視された時も、政府は『夫人は公人ではなく私人』との閣議決定までして、昭恵氏を徹底的にガードした。ところが安倍元総理が死去するや、今度は自ら公人、つまり政治団体の代表として、夫の政治資金を非課税で引き継ぐ。国民の目には『昭恵氏は自分の都合に合わせて、私人と公人を巧みに使い分けている』と映るでしょうね」
しかも政党支部には国民の血税を原資とする政党交付金が交付されており、解散時に残金がある場合は総務大臣から返還を命じられる。ところが昭恵氏は、政党支部の残金を晋和会への寄付や人件費などの名目で使い切っていたのだ。政治部記者が続ける。
「ここまでスッキリ処理されると、確信犯と言うほかありません。さらに言えば、昭恵氏は弔い選挙に出馬することを完全否定しており、引き継いだ政治資金を何に使うのか、という問題もある。昭恵氏の周辺からは安倍晋三記念館の建設費の一部に、との声も聞こえてきますが、とてもではないが、納税者である国民は納得しないでしょうね」
一連の昭恵氏の行動は、まさに「疑惑だらけ」なのである。
(石森巌)