ここ最近の初夏を思わせる気温上昇とともに、花粉の飛散がピークを迎えている。気象庁の発表によれば、今年の花粉飛散量は前年同様に多め。この状態が4月中旬まで続き、終息するのは5月に入ってからだと予測している。
花粉症の患者にとっては悩ましいこの時期だが、実はあのマンモスが絶滅した原因に、花粉症が深く関わっているのではないか、との研究結果が科学雑誌「Earth History and Biodiversity(地球の歴史と生物多様性)」に掲載されたことがある。
マンモスが地球上に生息していたのは、おおよそ500万年から4000年前。氷河期末期の1万年前頃から減少し始めたされる。これまでの研究で、彼らが絶滅に至ったとされる原因のひとつが「気候変動」だ。
マンモスは約7万年から1万年前の最終氷河期まではなんとか生き残ったものの、その後に始まった急激な温暖化により、平均気温は約10度も上昇。植生環境が一変し、餌となるものが激減したことで環境変化についていけず、絶滅したのではないか、というものだ。
そしてもうひとつ挙げられるのが「人類による狩猟」説だった。
人類の祖先であるホモ・サピエンスは約20万年前から30万年前にアフリカで誕生し、その後、世界中へと広がった。この時期の化石からは、大型動物を狩るための鋭利で頑丈な石器があったことがわかっており、人類がマンモスを狩りをしていたことは間違いない。つまり、マンモスは人類より狩り尽くされ、種の絶滅に至ったのではないか、というのだ。
ところがこの新説では、地球温暖化により植物が繁栄したことで、大量の花粉が飛散。マンモスが花粉へのアレルギー反応を引き起こして嗅覚が鈍ると、繁殖期に互いの匂いを嗅ぎ分けることができず、交尾を逃す。その結果、頭数が激減し、最終的に絶滅した可能性があるのだと…。
イスラエルの研究機関「Spring Style Tech Design」の研究チームは、マンモスの胃の内容物に含まれるアレルギーに着目。するとミイラ化したマンモスの組織や、保存された植物質に埋め込まれた花粉が多数、発見された。花粉が実際にアレルギー反応を引き起こしたかどうかは、アレルギー反応中に体が生成したタンパク質を探す必要があるが、化石化しているマンモスの胴体や腸からは、すでに免疫タンパク質のペプチドが検出されている。今後は化石化したマンモスの糞便検査により、マンモスがひどい花粉症にかかっていたかどうかが判明するという。
花粉症による鼻づまりでコミュニケーションが取れず、衰退して絶滅。この新説が事実であればまさに「花粉症、恐るべし」である。
(ジョン・ドゥ)