刑事モノと並んで鉄板ジャンルのひとつに数えられる「医療ドラマ」だが、専門性の高い分野だけに、「現場」の描写をめぐっては、異論が噴出することがままある。現実世界とドラマ世界のギャップが、どうしても生じるのだ。1月期の作品でもそうした事態が発生し、大ブーイング飛び交う侃々諤々の様相を呈しているのだが…。(2024年1月12日配信)
川栄李奈が主演する「となりのナースエイド」(日本テレビ系)の第1話が1月10日に放送されたが、速報値で世帯平均視聴率8.6%、個人視聴率でも2021年7月期「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」以来の5.0%と好スタートを切ったことが、ビデオリサーチの調べでわかった。
ネット配信アプリ「TVer」視聴ランキングでも「相棒」(テレビ朝日系)を抜いて、なにかと話題のダウンタウンの帯番組「水曜日のダウンタウン」(TBS系)に次ぐ2位につけている。
ナースエイドとは、病院で患者の身の回りの世話をやいたり、病室の環境整備を行う「看護助手」のこと。現実世界の病院では、中高年マダムや外国人労働者が「看護助手」として働いていることが多い。
さらに現実と異なるのは、滅菌機材に囲まれ清潔状態が保たれるべき手術室に、医療資格のない助手が汚れたユニフォームで乗り込んできたり、腰が痛いという高齢者を先に診ろと命令したり…。主人公の川栄が荒唐無稽すぎるのだ。
おかげでSNS上では、医療従事者からの大ブーイングが噴出。あまりのデタラメぶりに「医療従事者からツッコミを入れられるのを狙った炎上商法」とまで指摘されるほどだ。
「医療ドラマは当たれば視聴率を稼げますが、サジ加減が難しいんです。医療考証やリアリティーに欠ければ、視聴者にそっぽを向かれる。あまりにシリアスな内容だと、視聴者から『気持ち悪い』『不快』と指摘され、コメディーに寄せれば『患者の苦しみがわかっていない』と、闘病中の患者や遺族を傷つける。だから医療そのものでなく、医師のキャラクターをメインに描かれるドラマが多いんです」
筆者も医療ネタを提供している、あるドラマ制作責任者は、そう言って苦労を明かすのだ。
川栄演じる看護助手のキャラクターを売りに、このまま視聴率をキープできるのか。それともリアリティーさを欠く展開に医療従事者だけでなく、一般視聴者も脱落してしまうのか。同じ時間帯でフジテレビの新ドラマが始まる次週1月17日に、その評価が問われそうだ。
(那須優子)