阿部サダヲ主演のドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS系)が、なかなか面白い。中でも懐かしさを覚えたのが、主人公の市郎たち行きつけの喫茶店「喫茶&バー すきゃんだる」。なにしろこの店、当時、筆者が悪ガキたちとたむろしていた店に、雰囲気がそっくりなのだ。そういえばあんなオヤジだったよな~、と思わず苦笑いしてしまいそうなマスター役を演じるのが、かつて「アパホテル不倫」で芸能マスコミの話題をさらった袴田吉彦だ。
袴田の不倫が「週刊新潮」で報じられたのは、2017年1月である。同誌の取材に対し、お相手のグラビアアイドル・青山真麻が「ホテルに行ったのは10回、そのうち7回はアパホテルだった」「しかも、メンバーズカードでポイントを貯めていた」と暴露したから大変。一躍「アパ不倫」として、メディアを駆けめぐることになった。
だがこの騒動、これで終わることはなかった。その後、彼女が複数の男性誌に一糸まとわぬ姿で登場したからだ。そして「動くのが面倒だったのか、私が上になった」「次はアパじゃなく、もう少し高級なホテルに連れて行ってくれる人がいい」などと発言。SNSに〈ホテル代くらいケチすなよ!〉〈芸能人のくせにセコイ奴〉といった書き込みが続出する事態に発展したのである。
騒動の余波もあり、2017年9月、袴田は7年間連れ添ったタレントの河中あいとの離婚を発表。結婚の翌年に生まれた長女とも離れ離れになることを余儀なくされた。
そんな失意にある袴田に手を差し伸べたのが、ダウンタウンの番組制作スタッフだ。袴田は同年末の「絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時!」(日本テレビ系)に出演。ほぼ何も着ていないコスプレ姿で下着を模したマスクを被り、同じく不倫をスッパ抜かれた原田龍二とともに「不倫仮面」などとして登場したのだが、これがバカウケしたのだ。当時、日本テレビ関係者は、筆者の取材にこう語っている。
「騒動から1年も経たない段階で、公共の電波であの格好を晒すわけですからね。本人も相当悩んだと聞いています。最終的には元奥さんに許可を得ての出演となったようですが、全てをかなぐり捨てたからこそできた、まさに捨て身の芝居だったということです」
そんな騒動から2年後の2019年5月31日、アパホテルの元谷芙美子社長が「アパリゾート上越妙高 ひまわりコキア王国」発表記者会見に出席。ここで飛び出したのが、袴田についての質問だった。
「私、あんまりちょっと実際に知らないんですよ」
と前置きした元谷社長は、
「ただ、お陰様で1500万人の会員さんがいらしてくださって、どなたがいらしてくださっても、社長としては嬉しい限りです」
袴田との共演の可能性はあるのかと畳みかけられても、
「オファーはまだいただいておりませんので…広報を通してください」
そう言って苦笑いするのだった。このやり取りには笑うしかなかったが、袴田はその後、美容サロンを経営する女性と再婚。アパホテルを現在も利用しているかどうかは、定かではない。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。