「沢田研二、ツアー千秋楽の異変『歌詞間違い連発』『難聴・視力低下を告白』…弱気発言にファン騒然」
そんな物騒なタイトルが付いた「女性セブン」の記事を、2月初旬に目にした。1月にのライブツアー最終日、歌い出しで何度か歌詞を間違え、MC中に「(自分は)難聴だ」「体温計のピッていう音が聞こえないから、ずっと脇に挟んだまま」と語ったとして、記事には「見ているこちらがハラハラしちゃったよ」と心配する70代男性ファンのコメントが添えられていた。
確かにかつてのライブでも曲途中に歌詞が出てこなくなり、演奏を一時中断。「もう一度やらせてもらいます」と再演奏したことがあるが、ジュリーも今年6月で御年76。超人でもない限り、体の衰えは否めない。しかも、多少フレーズを間違えてもごまかせるギタリストと違い、そうもいかないのがボーカリストの辛いところだ。
17歳でザ・タイガースのフロントマンとしてステージに立ってから、約60年。自信とプライドを持って、コンサートに臨んできた。
ところが、だ。そのプライドを懸け、さいたまスーパーアリーナで開催予定だった公演を突如、ドタキャン。詰めかけた報道陣を前に、自宅近くの公園で記者会見を開き、心情を吐露したのは2018年10月18日だった。
コンサート当日、イベント会社から集客9000人と聞いていたジュリー。しかしリハーサル時に、客席の一部が座れない状態になっていたことを不審に思って尋ねると、実際の客入りが7000人だったことが判明する。沢田いわく、
「リハーサル前にモニターを見て『なんだこれは!』となって。客席がスカスカな状態でやるのはアーティストにとって酷なこと。『ライブをやるならいっぱいにしてくれ、無理なら断ってくれ』といつも(事務所やイベンターに)言ってきた。なのでこの状態ではできないと思い、中止は自分で決めました。僕にも意地がある。でも、ファンの方にはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。責任は僕にあります」
コンサート開始の1時間15分前に帰ってしまったことはプロとしての意地だった、としつつも、ファンに対しては何度も頭を下げた。
とはいえ、このドタキャン騒動が報じられると、「プロならやるべき」「勝手にしすぎ」と猛批判が巻き起こる。
このドタキャン騒動しかり、歌詞間違え報道しかり、その一挙手一投足が報じられるのも、スターの証なのだ。
コンプライアンス重視と言われる今、本物のスターがいるかどうかは知らないが、ジュリーにはいつまでもやんちゃで、ありのまま自由で、過激でいてほしい。1980年代、連日のようにジュリーが乗るガンメタリックのBMWを追跡した、あの頃を経験した者としては、そう願ってやまないのだが…。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。