ごくごく小さい虫が、なんとも厄介な事態を引き起こしている。たかが南京虫(トコジラミ)と侮るなかれ。なぜか今、これが日本で大繁殖し、深刻な被害をもたらしているのだ。ではいったい、何をすればいいのか。ぜひとも知っておくべき基礎知識と「本当に正しい対策」をここに挙げる。(3月16日配信)
麻疹が流行し、シラミや南京虫が大量発生。日本はいったいどうしたのか。
二十四節気の「啓蟄」も過ぎたこの季節、シラミの駆虫剤と南京虫(トコジラミ)にも効く燻製剤が、ドラッグストアに並ぶ。
特に南京虫は、2023年に外国人観光客インバウンドが戻るや、駆除依頼件数は過去最多となり、通勤電車の座席や図書館の蔵書からも見つかるほどに大繁殖。しかも誤った知識でカバンやスーツケースから持ち込まれた数匹が、自宅全体に広がるおそれもある。
以下に、南京虫について頭に入れておくべき注意点を挙げておこう。
【ホテルのベッドで荷物を広げるのはNG】
旅行や出張などでホテルに宿泊する際、自宅に南京虫を持ち込まないために、ホテルの部屋に着いたらまず、スーツケースやスポーツバッグが丸ごと入るゴミ袋に荷物を入れ、その中で必要なものだけを取り出そう。
南京虫はベッド周りにいるので、ベッドマットの下などにもし黒い点々を見つけたら、それは前夜の宿泊者が刺された後の、南京虫の血糞だ。また、ベッドの上での荷造りは厳禁。自宅に南京虫を持ち込んでしまうからだ。
【明るいところには出てこない】
夜行性の害虫であり、照明があると出てこないため、就寝時も荷造りの際も、部屋の照明を全部つけた方がいい。昼間は隙間に潜り込んでいるので、万が一、持ち帰った時のために、家に入る前にスーツケースの凹んだ箇所を拭いておきたい。
【赤い発疹と激しいかゆみが出たら刺されたサイン】
深夜0時から3時頃、眠っている間に赤い発疹と激しいかゆみが出たら、それは南京虫に刺されたということ。吸血された際、刺し口に残った唾液がアレルゲンとなり、ひどい場合は2年近くも激しいかゆみに苦しむことになる。
かゆみで目が覚め、電気をつけた途端に一目散に逃げ出しているので、翌日、全ての照明を消して夜中の2時頃に掛け布団をめくってから電気をつければ、シーツの上で逃げ出す南京虫を見つけることができる。
【業者に駆除を依頼すると10万円以上】
盲点は掃除機だ。南京虫がいそうなところに掃除機をかけただけでは、駆除にならない。それどころか、掃除機のフィルターの隙間にメスの南京虫1匹が数百個の卵を産卵し、その掃除機で別の部屋を掃除すると、家中に南京虫がバラ撒かれることになる。こうなると業者に駆除を頼むにしても、代金は10万円以上かかると言われている。
南京虫は熱に弱いので、もし家にスチームクリーナーがあるなら、掃除機ではなくスチームクリーナーを使い、その上で掃除機をかけて、ゴミは直ちに密封して捨てよう。
【電車に乗る際に羽織るべき上着】
厄介なのは電車の座席だが、シラミはツルッとした素材を登ることができないという弱点がある。アウトドアで着るような防水仕様のアウターを羽織ることで、南京虫の付着を防げる。
南京虫は10度程度の気温では2年間、家の中で生存できたという調査結果がある。とにかく数匹見つけた段階で早めに駆除を頼むことで、被害も駆除代金も最小限に抑えられる。
(那須優子)