7月13日に米トランプ前大統領の暗殺未遂事件を起こしたトーマス・マシュー・クルックス容疑者(死亡)の行動で、「空白の11分」が明らかになった。7月24日、米下院司法委員会の公聴会で、米連邦捜査局(FBI)のレイ長官が明らかにしたものだ。
クルックス容疑者はトランプ氏が演説を始める約2時間前に、演説会場から約180メートル離れたところでドローンを飛ばし、約11分間にわたってライブ配信をしていた。このライブ配信を誰が見たのか。
レイ長官によると、クルックス容疑者は銃撃現場となったペンシルベニア州バトラーの銃撃現場を3度、訪れている。7月6日に20分間、周辺を歩き回り、7月13日午前には17分間滞在。同日午後に事件を起こした。
FBIは最終的に犯行2時間前のドローン映像で、倉庫の上にいるのを確認し、「銃撃に最適な場所を見つけようとしていた」と分析しているが、トランプ氏に近いシークレットサービス側からは樹木に隠れるあの倉庫上を、クルックス容疑者単独で見つけられるだろうか。
FBIによると、ライブ映像の配信状況の詳細は、まだ調査中という。公聴会でのレイ長官の証言によると、クルックス容疑者は7月6日、1963年にケネディ大統領が銃撃されて死亡し、元海兵隊員のオズワルド容疑者が逮捕された事件について、Googleで検索。パソコンで「オズワルドはケネディからどのくらい離れていたか」を調べていたという。そしてその日にトランプ氏の選挙集会への参加手続きを行った。
FBIはクルックス容疑者は「一匹狼」、すなわち単独犯とみているが、一連の事前行動を元にすれば、「スリーパー」と呼ばれるテロリストのタイプに限りなく近い。普段は物静かだが、組織の命令を受けて目覚め、遠隔操作で犯行を行う。犯行後は、単独犯としての証拠しか残さない。集会への参加手続き直前にケネディ暗殺容疑者のログをパソコンに残し、「オズワルド容疑者が動機」という構図を自ら残している。
二度の下見の後、犯行直前のライブ配信で「最後の指令」を受けたと考えると、「空白の11分」が事件の全貌を明らかにする大きなカギとなりそうだ。
(健田ミナミ)