ドナルド・トランプ「神格化」プロジェクトがここにきて鎮火気味だ。
日本時間の7月22日、米国のバイデン大統領が11月の大統領選での再選を断念すると、「確トラ」だと騒がれていた状況が一気に変わってきたという。現在、副大統領のカマラ・ハリス氏が民主党の実質的な候補になったからだ。
この大統領選、7月13日に発生したトランプ候補暗殺未遂事件で、その瞬間の写真が「神の1枚」として祭り上げられたことで、トランプの支持率は一気に上がったとメディアは報道。事実、世論のほとんどが「次はトランプ」と確信したことで、金融相場はトランプ仕様で動き始め、自民党の茂木幹事長は「『ほぼトラ』から『確トラ』に近くなっている」と発言した。
ところが、形勢が一気に逆転ムードだというのだ。これについて、予想以上の動きがあると週刊誌の政治担当記者が話す。
「茂木幹事長が『確トラ』と発言した時は、確かに世間のムードがそうでした。たとえバイデン大統領が撤退し、ハリス副大統領が候補になってもすでに手遅れと言われていたんです。ところが実際にそうなってみると、全米の世論調査ではなんと、ハリス氏が2ポイントリード。バイデン派でもトランプ派でもない浮動層と言いますか、特に若者層が有色人種で59歳と若いハリス氏の支持に回っています」
この追い上げの背景には、SNSの力が大きく影響している。というのも、ハリス氏が実質上の候補になった途端に、歌手でフォロワー数2億人超えのアリアナ・グランデが「今こそトランプを倒すとき」と声明を上げ、同じくフォロワー数3億人超えのビヨンセが自身の楽曲の使用をハリス氏に許可したのだ。この有色系セレブリティの後押しが若者層を動かしたといっていい。
だが、集会でトランプが紅潮した顔で「カマラ(ハリス)は嘘つきだ」「お前はクビだ」とトランプ語で〝口撃〟を始めたように、今後ハリス氏に関する醜聞があぶり出される可能性はある。現状はバイデンが撤退したことのボーナスポイントを加えて、あくまで対等に戦えるようになったレベルだと見るのが正しいだろう。
ただし、ハリス氏にはトランプ氏を一気に逆転できる手があるというのだ。
「究極のインフルエンサーの動向が注目されていますね。それは泣く子も黙るシンガーソングライター、テイラー・スウィフトです。実は彼女、イスラエル・ガザ問題でイスラエル側に立っていたバイデン大統領を支持していませんでした。ところが、同じ民主党でもハリス氏は逆にパレスチナ側の被害に同情する発言を常にしています。このことをテイラーがどう考えるかです。もし彼女がハリス氏支持を表明したら、大勢が決まると言っても過言ではありません。実際、まだ大統領選で迷っている若者の3割から4割が、テイラーが支持した方に投票すると意思表示をしているようですからね」(前出・週刊誌記者)
ビリオネア有名人が国家権力を動かすのが果たして正常か否か、それは何とも言えないが、どんな疑惑が出ても権力を握り続ける自民党にストレスを溜める日本人には、少し羨ましい話かもしれない。
(田村元希)